「演習の第二段階」

数学の問題で解けなかったときに解答を見て、その解法を知れば、次に似たような問題に出会ったときに自分で解けるようになる場合もあります。

しかし問題のレベルが上がると、解答を読んで「そうするのか!」と思ったとしても、同時に「自分でそれを思いつくのは難しい」と感じてしまうこともあります。

実は、難しい問題は解答を作る前に試行錯誤している部分があり、その部分は解答には記述されていません。模範解答を作る側からすると、できるだけきれいで鮮やかな解答を載せたいと思うので、ああでもないこうでもないと迷っている部分は見せないのです。

これが原因で、いくら洗練された解答の問題集で勉強しても、なかなか自分で解けるようにはならないのです。

 

そこで今回、東大・京大レベルの問題がどうしたら自力で解けるようになるのか、どうしたらその発想ができるようになるのか、についての本を書きました。

本当は2年ほど前に出版するつもりで準備していたのですが、諸事情により遅れに遅れてしまい、出版時期は来年の夏から秋にかけてとなります。

「稲荷の独習数学」の改訂と同時期に出すということです。

2冊を同じタイミングで出す方が戦略的にいいというのが出版社の判断なので。

 

この本の仮タイトルは「演習の第二段階」ですが、その「はじめに」の部分を載せておきます。

「はじめに」

一般に「分かる」と「できる」は違います。たとえば、東大・京大の問題の解答を読んで理解できても、自分で解けるわけではありません。
これはなぜでしょうか。
解答を読んで理解できるということは、その問題を解くために必要な知識と技術を持っているということなのに、なぜ解けないのか …
数学の問題は
1.条件
2.結論
が与えられており、この「1.条件」と「2.結論」をつなぐことを、問題を解くと言います。標準問題では「1.条件」と「2.結論」の距離が近く、知識や技術を身に付ければ「1.条件」と「2.結論」をつなぐことが出来ます。(この知識と技術を身につけるための標準問題での演習を私は、「演習の第一段階」と呼んでいます)
しかし、東大・京大の問題では「1.条件」と「2.結論」の距離が遠いのです。遠い形態は主に2つあり、「1.条件」が複雑であったり抽象的であって捉えにくい、「2.結論」がぼかされていてどこに向かって進めばよいのか分かりにくい、のようになっています。いずれにしても、持っている知識と技術がすぐに使えるようにはなっていないので、問題文の内容を調べ整理することが必要になります。
これが、東大・京大の問題の解答を読んで理解できても、自分ではなかなか解けるようにならないことの理由です。
では、どうすればよいのでしょうか。
第二段階の演習が必要です。すべきことは2つあり、1つはこれまで学んできたこと自体を深めるということです。たとえば「ユークリッドの互除法」を知っていて、それを使って問題を解くことができても、「ユークリッドの互除法」を証明せよと要求されて詰まりはしないでしょうか。1つ1つの技術を深く理解すれば応用範囲も広がります。
やり方を知るだけではなく、なぜそうするのかを人に説明できるぐらいに深く理解するようにしましょう。
もう1つは問題文の調べ方を知ることです。本書は主にこの点について書きましたが、すぐにできるようになるものから習得に時間がかかるものまでいろいろあります。
じっくり取り組んで、東大・京大数学で合格点が取れるようになってください。