数学を水物にしないために

興心です。最近は風邪が蔓延しているみたいで、ちょくちょく体調不良で休む生徒が出ていています。受験が後2ヶ月ほどということを考えると、受験生は体調管理にも気をつけて欲しいなと願っています。ここからの一週間はとても貴重に感じることでしょう。風邪をひいて浪費するのは勿体無いです。時間が貴重なものであると思いながら過ごすのはなかなか難しいことでもあるので、そういった期間を噛み締めながら受験に臨んでほしいですね。

段々と受験が近づいてきた感じがするので、今日は大学受験について書いてみようかなと思います。基本的に国公立大学は共通テストと二次試験の両方で合否が決まりますが、東大や京大といった難関大では二次試験の比重が高く、共通テストで多少ボーダーラインを切っても二次試験でしっかりと得点できれば合格できることも多いです。理系の場合、二次試験において数学の占める割合は高いことが多く、つまるところ、二次試験の数学で高得点が取れれば合格にグッと近づくことになります。

ただし「数学は水物」とよく言われることも事実で、過去にも数学がとても出来たのに本番で実力を発揮しきれず不合格になったようなこともありました(同じ理系科目の理科ではあまりそういったことは聞きません)。その度に「数学って難しいな」と思ったりもしましたが、最近は受験生と関わることも多く、なんとか常に実力を発揮することはできないものかと考えるようになりました。

もちろん実力を発揮し切るためにメンタルはとても重要ですが、精神論で片付けてしまってはあまり再現性もなく得るものがありません。今回は少しそういったところから離れて、できる対策について考えてみたいと思います。

当たり前ですが、まずは知識をつけることが大事です。理科では実力を発揮しきれなかったということは少ないのに数学ではしばしば起こることの理由は、数学の入試問題の問題数が少ないことにあると思っています。理系の場合、東大も京大も大問は6問で構成されており、かなり幅広く出題される傾向にあるため出題範囲を予想するのは難しく、そのうちの数問が苦手な分野から出題されると、急に不利な状況に陥ってしまいます。なので、まずは数学の各分野に対して等しく知識をつけておくことが実力を発揮しきれないことを避けるための対策になります。

また、入試問題に関係する知識を持っているかどうかで難易度が変わる問題も多々あります。知っていれば10分とかからず処理できるものが、知識がないと30分考えても手がかりさえ掴めないということが起こり得ます。手がかりが掴めないというのは時間制限のある入試においてはとても辛いことです。

ここで僕の思い出話をすることにしましょう。入試数学における印象深い出来事は150分の試験で最初に解けた問題にかかった時間が40分だった、ということと、その年最も簡単とされた問題が解けなかった、という二つが挙げられます。先ほども書きましたが、京大理系数学の入試問題は大問が6個あり、試験時間は150分間です。つまり単純計算で1問に費やすことができる時間は25分です。また総合的に150分間の試験なので、簡単な問題だと15分ほどで処理し切ることができます。そういった問題を見抜いて最初に解いてしまえば、後半は少し余裕を持って難問に取り組むことができます。しかしながら、入試本番においては計画が狂うことがよくあることも理解しておくべきでしょう。

僕の話に戻ると、試験においては最初に問題全てを一通り眺めてから解き始めることにしていました。並んだ問題をさらっと一通り見たのちに、図形問題の方針が大体立ったのでその問題から取り組むことにしましたが、いざ解き始めてみるとなかなか手強く、そうこうしているうちに時間だけが過ぎ去っていく感じがして、違う問題に手を出してみたりしながらなんとか解き終わって時計を見たらなんと40分も経っているではないですか!あの時はとても焦りました。大体3問から4問解ければ一応なんとかなるわけですが、それにしても最初の問題に時間を使いすぎたことになり、その後必死に残りの問題に取り組むことになりました。方針が立っても取り組みやすい問題があればそれから取り組むことも良いのではないかと思っています。しかしながら、最初の問題が解けると少し頭の回りが正常に近付いた感触がしたので、無理してでも解いてよかったとも言えますし…。結論として踏み込むべきか、問題を変えるべきかについてはかける時間も含めてシュミレーションしておくと本番で焦らないことにつながると思います。それに加えて、知識で解ける問題の割合を増やすことも時間に余裕を作るための一つの方法です。やはり「知識をつけること」がとても重要と言えそうです。

もう一つの思い出についても書いておくと、こちらは簡単な話で「盲点」に入ったという感じです。確率の問題があったのですが、いつもは確率の問題を解くときに選択肢に入る漸化式という方法が全く浮かばず、取りこぼしてしまいました(少し問題文がいやらしく、そうとは思いつきにくい文章になっていて、最近生徒にも解かせてみましたが僕と同じことをしていました笑)。ある程度「こういう問題に対してはこういう選択肢もあるし、こういう選択肢もある」といったことを練習段階から意識して取り組んでおくと、そういった取りこぼしが減るのかなとも最近思います。

この話に関連して、「試行錯誤を大事に」ということは一つ言えそうです。演習のクラスでそれぞれの生徒が問題を解くのを眺めていると、生徒ごとに問題を解くときのスタイルが違うことが分かります。よくできる生徒は問題を配ったときに手が動き始めるのが早いように感じます。よくできるのだから当たり前じゃないか、と思うかもしれませんが、実はそうではなく、条件を式にしてみたり文章の中に出てきたグラフを書いてみたりといった作業に取り掛かるまでの時間が短いということを言っています。逆に正答率の高くない生徒は問題文を眺めて何かを思いつくのを待っているように見えます。書いていることが直接答案に結びつかなくても、こういった作業は問題に対する理解を深め、次なる方針を思いつくためにきっかけになります。よく問題を分析すべしと言いますが、試さないことには分析とは言えないと考えています。まずは問題文に書いてあることを理解するためにもいろいろ試してみるのが一番だと思います。

ということで「知識をつける」、「時間配分をシュミレーションしておく」、「試行錯誤をし始めるまでの時間を短くする」といったことに気を配りつつ、問題演習を繰り返すことが数学を水物にしないことに近付くと思います。この中の「知識をつける」ということについては、演習1で問われる知識についてじっくり学べるので、受験生は暇があれば演習1の内容を見返しておくと良いと個人的に思っています。他にもいろいろ方法はあると思いますが、そういったことはやってみてだんだんわかっていくものだと思うので今回はこれぐらいにしておきましょう。

来年も受験生の朗報が聞けることを願いながら、今日のブログを終えたいと思います。