中2から高校数学

関西の中高一貫校では、ここ2、3年で、中2のどこかから高校数学に入る学校が急激に増えました。

それまでは横一線で、示し合わせたように中3から高校数学に入っていました。

これは私の主張が届いたからではないかと考えています。

「小さな数学塾のヒミツ」を書いたのが2010年、「頭のいい子には中学受験をさせるな」が2014年、一貫して、灘のように中2から高校数学に入るのがよいと主張し続けてきました。

そうすれば、数ⅠA、数ⅡB、数Ⅲに1年ずつかけても2年間の演習期間を確保できるからです。

では、どうして2年間の演習期間が必要なのでしょうか?

これは経験則ですが、京大に受かっている平均的な生徒が「無理をせずに」学んだとき、それだけの時間がかかるということです。

まず、入試問題を解くための知識と技術を完成させるのに1年かかります。基本事項については、何を問われても即座に反応することができるようになるのにそれだけの期間が必要です。

これができれば、阪大ぐらいまでの問題がすらすらと解けるようになります。要するに、東大・京大の問題のための勉強を始めてもよい段階に来たということです。

最低限の知識と技術がない段階で東大・京大の問題を解いても、空回りするだけで効果は薄いのです。

そして遂に、東大・京大の問題を解くための演習の第二段階が始まります。

通常、これにも1年かかります。

結局、2年かかるのです。

ところが、一般的な中高一貫校がしているように、中3から高校数学に入り、高校課程を3年間で学んだとすれば、演習期間は1年です。つまり、「無理をしながら」の受験勉強になるのです。

北野も高校課程を2年間で学ぶので、演習期間は1年です。やはり、その受験勉強は忙しいものになります。

堀川だと、高校課程を学び終わるのが高3の夏休み前です。すると、演習期間は半年です。こうなると、もう受験勉強は命懸けです。そして、全国の進学校のほとんどがこのパターンを採用しています。

確かに、中高一貫校は高校受験をする高校に比べて余裕がありますが、モチベーションの管理が難しく、下手をすると一気に追い抜かれてしまいます。特に中学入学後の数年のその落ちは顕著です。小学生にとって中学受験が大変だったこと、中1生にとって大学受験が身近ではないこと、そもそも中学生が自己管理ができるほどに成熟していないこと、理由はさまざまですが、中高一貫校の中学生に真剣な勉強をさせるのは難しいのです。

とすると、もっと別の動機付けをすることが必要になります。彼らのモチベーションが上がって来るのをのんびりと待つのではなく、むしろ刺激的に学べる方法を探すべきです。

その一つが進度を速くすることで、そうすると灘の方法に近付き、結果として大学受験にも有利になります。

しかも、やってみればすぐに分かりますが、中学数学に2年もかける必要は全くありません。量的な面でも高校数学の5分の1もありませんし、内容的にも数ⅠAのための準備体操程度のものなので、速い子だと半年で十分だし、1年もかけて取り組めば余裕でこなすことができます。

こういったことが、少しずつ常識として各中高一貫校に伝わりつつあると感じています。