中高一貫校と一般高校の違い

一般の数学の授業に無駄が多いことを知り、劇的に授業の効率を上げる方法があるに違いないと直観し、それを探しに行ったという話を書きました。

これは稲荷塾のメソッドを作り上げていく上での基本的なやり方です。中学数学と高校数学の学ぶ量の比が1:5ぐらいだから、学ぶためにかける時間の比も1:5ぐらいが適当なのではないかと直感し、中2から高校数学に入ることにしたのもそのうちの1つです。

ここで、何かが正しいと直観する方法は2つあります。豊富な観察からそこに潜む本質を帰納する方法と、少ない事例を精査することにより演繹的に直観する方法です。

稲荷塾の場合生徒数も少ないので、基本的に後者の方法をとってきました。

だから、直観的にこれが本質だと思ったことが実際には本質からずれていたというようなことが起こります。

たとえば、上に書いた学ぶ量の比にかける時間の比を合わせるべきだと考えたのも、その例です。確かに中2から高校数学に入ってうまくいく生徒もいます。しかし実際にはなかなか理論通りにはいかないのです。

うまくいく生徒はすごく頭がいいか、勉強へのモチベーションが高いかの少なくとも一方の条件を満たしていなければなりません。特にモチベーションの問題は大きいです。中高一貫校の中2の子と高校受験をした高1の子には決定的な差があります。中高一貫校の中2の子は基本的に頑張りません。相当に頭がよくて、もしやるべきことをやったらすごいことが起こりそうなのに火をつけるのがすごく難しいのです。

なぜでしょうか?

一つは年令の問題はあるでしょう。中2から高1ぐらいの間に何かが変わる子は多いです。体も大きくなり、男の子は声変りをしたり、急に落ち着いて来るというか子ども子どもしたような雰囲気がなくなるのです。自分で考え、自分のモチベーションによって動き出すようになると言ってもいいかも知れません。

中学受験をして6年後に大学受験があるのと高校受験をして3年後に大学受験があるのでは、その遠さが随分違うということもあるでしょう。中学に受かったばかりの子は大学受験に向けて頑張ろうなどという気持ちは持っていません。遊びたい気持ちを我慢してようやく合格したのです。遊ぶ気満々です。実際、クラブ活動を初め、それまで経験したことがないような楽しいことがいっぱいあるのです。それに小学生のときに通っていた中学受験のための塾では、すべきことを全部塾が準備して、はいこれをやりましょうと導いてくれたのですが、中学に入ってからはするべきことのメニューを決めることも、それを実行するための計画を立てることも全部自分でしなければなりません。結局、何もできず、定期テスト前の詰め込みしかしなくなったとしてもおかしくないのです。

これに対して高校受験をした高1生は3年後に大学受験があるのです。特に北野の子は京大に行きたいから北野を目指し、受かったらそのままの勢いで頑張り続けるのです。中高一貫校の生徒とは全然考え方が違うのです。

ということで、中高一貫校の中2の子と高校受験をした高1の子では、同じ数ⅠAを学んだとしてもその取り組みの真剣さはまるで違うのです。結局、量だけでは判断することができません。

こういう経緯を見て、中学生が高校数学を学ぶための方法を修正しなければならないと感じました。

To be continued.