「分かる」から「できる」へ
反転授業では、家庭学習で「分かった」ことを教室で「できる」ようにすることが目標になります。
今日は「できる」ようにするための授業について書きます。
まず小テスト。
これはちゃんと予習してきているかどうかを確認するために行っていました。まあ、覚えるべきことを覚えてきているかどうかとか、最低限の理解をしてきているかどうかのチェックをしていたのです。
しかし、あるときにそのレベルを急に上げることになりました。
そのきっかけは笑い話のような事件です。
稲荷塾では一般と比べて2倍の進度で進むので半年で数ⅠAを学びます。数ⅠAを終えると、その3回の単元テストの成績を見て数ⅡBに進むか、もう一度数ⅠAを学び直すかを決めます。3回の単元テストの成績の平均が50点を越えていたら数ⅡBに進みます。30点未満ならばもう一度数ⅠAです。単元テストの平均が50点というのが河合塾の全統高1模試で偏差値70ぐらいのレベルです。30点から50点の場合は学年的に数ⅠAを2回学ぶ余裕があるかどうかで判断します。
あるとき、1回目の受講での成績が非常に悪く、2回目の受講になった生徒が小テストで別人のようにいい成績をとるようになったのです。答案内容もしっかりしていて、その変化に驚きました。
ところが、1回目の単元テストの彼の結果は目も当てられないぐらいに悲惨だったのです。
小テストは1回目も2回目も同じものを使っていたのですが、単元テストは2回受講する生徒がいることを前提に2種類を準備していたからです。つまり、彼は小テストを「予習」していたのです。
そんな馬鹿な、と思うかも知れませんが、彼のように「理解するため」ではなく「点を取るため」に勉強している生徒は案外多いのです。同じことで、やり方を覚えて理解したと誤解している生徒も多いです。公文を経て稲荷塾に来る生徒のほとんどがそうで、結局一からやり直さなければならないことが多いのです。
この事件を契機に小テストを2セット作ることになり、どうせ作るんだったらと思い、十分に理解するのが難しいだろうと思われるところを突くような問題にしました。要するに、「こういうレベルで予習して来てほしい」というメッセージを送ることにしたのです。
これが良かったです。
特に上位層がびっくりしました。それまで満点を取るのが当たり前だと思っていた小テストでいきなり25点とかになってしまったからです。小テストは短い4問でできており、得点は0点、25点、50点、75点、100点のいずれかになるので、4問中1問ぐらいしか解けなくなったということです。
当然、彼らは勉強のやり方を変えました。もっと深く理解しなければならないと感じたのです。
遊び心で小テストのレベルを上げたことが、意外にも効果的だったのです。こちらが願う予習のレベルを示すということが重要でした。
小テストは15分から20分ぐらいかけて行い、それを採点している間は幾何の楽しい問題を考えてもらいます。採点が終わると直しをし、ここからは個別対応になります。直した生徒がそれを持って来るので、解答の書き方や用語の使い方を含めいろんなコメントをすることができます。
小テストの直しが終わると演習問題を解きます。演習問題はAとBに分かれており、Aが授業での到達目標です。授業で扱った重要問題の類題で重要事項の確認をするとともに、テキスト等には載っていないようなタイプの問題も解いて、理解を深めます。こちらの想定としては2時間の授業時間内にA問題がぎりぎり終わるかどうかという分量にしていますが、中には非常に冴えていて、早く終わってしまう生徒もいるので、そういう生徒のためにB問題を準備しておきます。B問題は基本的に証明問題で、覚えていて使えればいいと思っているようなことをなぜか、と問うので、かなりできる生徒でも、う~ん、と唸ることになります。
「分かりやすい授業」ではなく、「理解が不十分であることに生徒自身が気付き、できるようになるための授業」を目指していきたいと考えています。