小学生部について
一昨日、稲荷塾の考え方の変遷について書きました。
今日は小学生部の考え方について書きます。
これも随分変わったと思います。
元々の考え方はやはり学ぶ量に注目していました。
算数1学年分は週1回1時間の授業により約2カ月で終わってしまう程度なので、さっさと終わらせて中学数学をすればよい。その勢いで中学数学も終わってしまうようならば、たとえば中1から高校数学に入るもよし。
大体こんな感じでした。
しかし、反転授業を始めたことにより、早く準備しておくことの意味が薄れたことと、小学生に数学を教えることの難しさにぶつかり続けてきたことにより、考え方は次第に変わりました。
小学生に数学を教えることの難しさというのは、小学生が大学受験を意識するはずがないということに始まり、小学生の勉強へのモチベーションと高校生の勉強へのモチベーションには大きな違いがあるということです。
高校生は自分の将来のための必要事項として勉強を位置付けているのに対して、小学生にはそのような意識はありません。したがって、すいすいと進んでいるときは楽しいと感じていても、たとえば中学数学に入って苦戦するところが出て来たら途端にやる気を失います。苦しくてもこれを克服することが大事だから頑張ろうなどという発想はありません。
ですから中学受験のようにすぐ目の前に見えるような目標を設定するとか、仲間との競争に勝つというような刺激がなければ小学生が頑張ることはできません。
稲荷塾のように数学そのものを楽しみましょうなどという目標を掲げると、それに反応できる生徒はごく一部になってしまうのです。
こういう経緯の中で、小学生部の対象学年を3年生以上としていたのを5年生以上に引き上げました。
5年生から始めたとしても優秀な子は週1回1時間の授業を通して小学生の間に中学数学全部を余裕で終わらせるので、3年生から始める必要がないということです。
それに、5年生ぐらいから小学生は急に落ち着き始めます。3年生の大半は子ども子どもしていて、勉強どころの騒ぎではない子も多いのです。これをあやして勉強に向かわせるのは私の得意分野ではありません。私が直接担当して「それはこの間やったやん!」などと言うと泣き出してしまう子もいて、びっくりさせられるのです。
中学数学に入るとまず、代数を使って方程式を立てたり、それを解いたりというところが出てきます。「ほう! これは便利だ」と喜ぶ子がいる一方、移項の段階でミスを繰り返すような子が数学を楽しめているはずがありません。楽しめない生徒は作業も遅く、目も輝きません。こういう子はまだ稲荷塾に来る段階ではないと思います。自分のモチベーションにより勉強が必要だと感じてから来てほしいです。
結局、小学生は勉強するより遊んだ方がいいです。塾に来るなら遊びの一環として来るのです。遊びの中で人との関係を築く力が育ち、自分の好き嫌いもはっきりしていきます。勉強よりはるかに重要なことがいっぱいあり、そういうことに時間を使ってほしいです。