分かりやすい授業はいい授業か? Part 3

「分かりやすい授業」はいいように見えて、実は効率がよくない。

この気付きを得て、稲荷塾の反転授業が始まった。

というところまで書きました。

https://inarijuku.com/2024/02/21/33599/

 

反転授業の家庭での予習について書いたので、今回は教室で何をするのかを書く予定でしたが、その前に、どうしてそんなに効率を上げる必要があるのかを確認しておきます。

数学の高校課程は数ⅠA、数ⅡB、数ⅢCの3つでできており、それぞれに1年ずつかけて学ぶようにデザインされています。

しかし、その推奨されている通りの進度で進むと、高校課程修了後の演習をする時間がとれません。

演習の目的は2つあり、1つは理解すること、もう1つは使えるようにすることです。

たとえば余弦定理を学んだとして、それがどのような場面でどのように使われるのかを知るためにする演習は理解するための演習です。この演習をいくら掘り下げても、次の単元に進み、さらにその次の単元に進み、とやって行く内に多くの部分を忘れて行きます。

では、いつ使えるようになるのでしょうか?

それは、高校課程を修了後、全体像が見えた後にする演習の中でできるようになるのです。各分野が全体の中でどういう位置付けになっているのかが分かり、他の分野とどのようにつながっているのかが分かる中で、絶対に覚えておかなければならない基礎事項の定着がなされ、徐々に使えるようになるのです。習ってすぐに使えるなどということはあり得ません。

結局、高校課程修了後の演習が重要で、数ⅠA、数ⅡB、数ⅢCのそれぞれに1年ずつをかけていてはその重要な部分が欠落してしまうのです。

そこで、進学校と呼ばれる高校では高校課程を一通り学ぶ期間を縮めようと努力しています。しかし、十分な演習期間を確保できているところは1つもありません。

たとえば、大阪の茨木高校は大阪のトップ高校の1つですが、高3の10月か11月ごろに高校課程が終わるようにしており、京大を受けるような生徒は文字通り、命懸けの受験勉強をしています。

京都、大阪で高校課程の修了時期が最も早いのは堀川と北野で高3の夏休み前です。演習期間は半年です。正直言ってまるで足りません。

では、演習期間が短いとどういう問題が生じるのでしょうか。

まず、数学の各分野の技術が使いこなせるレベルに到達するのが難しい、これが問題になります。

それに、高3の夏休み前に高校課程が修了するということは、高3になってからなお、数ⅢCの新しい分野を学んでいるということです。これにはすごく時間が取られます。覚えるべきことが多いので、理解するための演習が相当量必要になるからです。すると、本来、理科に投入すべき時間が削られます。

浪人して京大理系学部を受験する生徒はほぼ間違いなく理科で7割以上の得点をするのに対し、現役生は5割台でぎりぎり合格している生徒が多いのはこのためです。

結局、高校受験を経て高校生になった高3生の受験勉強は中高一貫校の高3生の受験勉強と比べてずっとハードなものになります。周りのみんなもそれをしているし、先輩たちもそうしてきたという学校の伝統上、当然のこととして受け入れられていますが、実際はすごく不利な状況で闘っているということです。

稲荷塾では反転授業で2倍の進度で進むことができます。すなわち、3年間で学ぶはずの高校課程を1年半で学ぶことができるのです。これが学びの効率を高めた効果で、1年半の演習期間を作り出すことができるのです。

この1年半の演習期間は中高一貫校より長いので、これだけでも状況を大きく改善したと言えます。

しかし、理想を言えば、高校課程修了後の演習期間は2年間ほしいのです。入試で問われる知識と技術を完成させるのに1年、京大・東大の問題が解けるようになるのにさらに1年かかるのが平均的な京大生の平均的なところだからです。

もちろん、最初の1年の演習というのは高2のときに実行するので、高3生ほどの集中力があるわけではありません。ですから、2年の演習を1年半に縮めることは十分に可能です。ですが、高2生がクラブ活動等にも熱中しつつ、無理なく勉強するとしたら、やはり2年間の演習期間がほしいのです。灘もそうしていますし …

それで、2年間の演習期間の確保はできるのか?

できます。

ちょっとブログが長くなったので、その具体的な方法はまたの機会に書くことにします。

To be continued.