中高一貫校vs北野

「小さな数学塾のヒミツ」を書いたころ、高校受験は中高一貫校と比べてすごく不利だと考えていました。

高校数学と中学数学では学ぶ量の比が 5:1 ぐらいで、もちろん高校数学の方がずっと難しくなります。なのに両者を3年ずつで学ぶことになるのが高校受験をするとで、時間配分という観点で非常にバランスが悪いのです。

中高一貫校なら中3から高校数学に入るので、高校数学は4年、中学数学は2年で学ぶことになります。

さらに灘では中2から高校数学に入るので、高校数学は5年、中学数学は1年で学びます。その結果、高校課程を一通り学ぶのに3年かけても2年余ることになり、灘の生徒は十分に演習することができるのです。

それに対して、高校受験をすると北野のように高校課程を2年で学ぶとしても演習期間は1年しかとることができず、忙しい高校生活、忙しい受験勉強をすることになると …

 

どうでしょうか?

すごく説得力があると思いませんか?

実際、灘の子はすごく余裕があるし、進学実績については言うまでもありません。

 

ところがその後、これとは全く違う考え方があることを知りました。

2010年に吉田君という北野の高2の生徒が入塾してきました。「稲荷の独習数学」の帯に推薦文を書いてくれている子で、成績は学年トップでした。

「こんな話は学校では聞いたことがない」などと言いながら、どんどんと新しい技術を吸収していくところがすごく印象的でした。

北野自体は地理的に稲荷塾と遠く、稲荷塾のメインの対象校とはなりにくいのですが、吉田君が引き金となり、その後北野の生徒がぽつぽつと入塾して来るようになりました。

すると、みんな雰囲気が似ているのです。

まず、エネルギッシュ。何事にも意欲的に取り組むという姿勢にあふれています。

するべきことをするのは当たり前と考えており、その点ですごく大人な感じで、中高一貫校の生徒と並んで座っていると、1学年以上学年が上のように見えるのです。

するべきことをする、中高一貫校の生徒、特に学年が若い場合は、これが難しいのです。

それで結局、北野の生徒の多くは受験も間に合わせてしまいます。

 

中高一貫校と北野、考え方がまるで違うのです。

中高一貫校は中学課程と高校課程に対する時間配分が良いところが利点ですが、中学入学後に勉強へのモチベーションが大きく落ち、勉強時間も激減するところが難点で、自立した勉強ができるようになることが当面の目標になります。

それに対して北野の場合は、京大に行きたくて北野を受け、受かったらますます燃えて頑張るのです。モチベーションが落ちるなんてなことはありません。

そういう子であれば、稲荷塾の反転授業により1年半で高校課程を終わることも、さらに特別クラスで1年で高校課程を終わることも問題なくこなすことができます。そうすると、演習期間も十分に確保することができますし、時間配分の不利感もなくなります。

 

結局、やる気になったところがスタート地点で、それが多少遅くても、いくらでも挽回の方法があるということです。