北野の進度は速いか?
高校課程は3年間で学ぶことを想定して作られています。
中高一貫校では中3から高2の3年間で高校課程を学び、高3の1年間は受験勉強をすることになります。
ところが、高校受験を必要とする高校で同じことをすると、受験勉強をする余裕がなくなってしまいます。
ですから、進学校と呼ばれる高校はどこも高校課程を学ぶ期間を短縮しています。
堀川では2年半弱で学び、高3の夏休み前に全部が終わるようにしており、これが一番多いパターンです。すると半年間演習をすることができます。
一番進度が速いのが北野で、2年間で高校課程を学びます。これだと演習期間は1年間となり、それは中学一貫校と同じです。
この北野のペースは速いのでしょうか?
これが今日のテーマです。
一般的な観点では速いということになります。中学一貫校も含めて一番速いのですから。
しかし、私はこれを遅いと見ています。
そのように考える理由は2つあります。
1つは高校課程を学ぶための演習よりも高校課程を学び終わってからの演習の方がはるかに効果的だということです。
もちろん、高校課程を学ぶための演習は必要です。新しく学んだ知識や技術がどのような場面で使われるかを問題を解く中で体験しなければ、深い理解に至ることができないからです。
しかし、やり過ぎてはいけません。全体像が見えていない段階で難しい問題による演習をすると、かえって混乱をもたらすこともあるし、何と言っても、進度が遅れてしまうからです。
それで、実際のところはどうなのかと言えば、どの進学校も基本的にやり過ぎています。
その結果、高校課程を学ぶ期間が長くなり、その後の演習期間が短くなります。
北野の進度が遅いと考えるもう一つの理由は、稲荷塾の反転授業を用いれば、高校課程は1年半で学ぶことができるということです。
一般に数学の授業で新しい知識や技術を伝えようとすれば、講師が板書することとそれを生徒がノートにとることという作業が必要で、実際の説明はその作業後に行われます。そして、この作業の時間が授業時間に占める割合が異常に高いということが問題です。
つまり、授業の約半分は作業だということです。
このことに気付いたとき、授業効果を劇的に向上させる方法がきっとあるはずだと直感しました。
そうして出来上がったのが稲荷塾の反転授業です。
これは画期的方法です。
これにより、3年間で学ぶようにデザインされた高校課程を1年半で学ぶことができるようになりました。
2倍の進度です。
高校課程を学ぶ期間を短縮すると、その後の演習期間が長くなります。
上に「高校課程を学ぶための演習よりも高校課程を学び終わってからの演習の方がはるかに効果的だ」と書きました。
前者は、新しく習ったことを理解するための演習ですが、次の単元、さらに次の単元に進むうちにどんどんと忘れていきます。たとえば、余弦定理を学んだとします。当然、そのときに証明も習い、それを理解します。ところが、それから1カ月経って、余弦定理を証明するようにと要求されたとして、できる生徒がどの程度いるでしょうか?
ほとんどいないのです。
ですから、そういったことが常にできる生徒がいたらすごく目立ちます。よほど頭がいいか、復習して一つ一つを定着させるという勉強法を確立し、それを実行できる能力を持っているかのどちらかですが、いずれにしてもすごいことです。
ところが、習ったことをそのように忘れていくのであれば、誰も大学には受かりません。
それなのに、受かる生徒はみんな、重要事項を「できる」こととして定着させているのです。
なぜでしょうか?
簡単なことです。彼らは高校課程を学び終えてからの演習をしたからにほかなりません。
全体像が見えてからの演習をすれば、他分野とのつながりも分かり、一つの流れの中での理解ができるので、そう簡単に忘れません。
結局、高校課程を早い段階で学び終え、その後の演習期間を長くすることが重要だということです。