元奨 …
私が京大の将棋部にいたころ、元奨励会員が私のほかに2人いました。元奨励会員を「元奨」と呼びますが、これは微妙な表現です。
普通のアマチュアより将棋がちょっと強いので、あの人は強いという肯定的な意味と、プロにはなれなかったという否定的な意味を同時に含んでいるのです。
そして元奨自身も屈折した思いを内に秘めているのです。
2人の元奨の1人は「アホウさん」と呼ばれていて、その如くにあっけらかんとしていて、結構将棋を楽しんでいるように見えましたが、もう1人は灘出身で一浪して工学部に入ってきていたこともあり、相当にねじれた心情を持っていたはずです。
この話をし出すと長いのですが、今回書こうと思っているテーマではありません。
そうではなく、今回書きたいのは、どんな道でも大成する人はすごいということです。
ついでに言えば、私の又従妹も元奨で、彼は奨励会を退会後、東大に行きました。
奨励会に在籍しているだけで、東大や京大に受かるぐらいの能力があり、さらにその中で勝ち抜いていく人はずっと切れるという印象でした。
実際、後に名人になった谷川君のお兄さんは灘から東大に行き、将棋もアマトップレベルでしたが、彼ら兄弟は同時期に将棋を始めて、圧倒的スピードで谷川君が強くなったので、彼がプロを目指したというのは有名な話です。正直言って、彼がどのぐらい頭がいいのか見当もつかないと感じていました。
しかし、上には上がいて谷川君は羽生に勝てず、羽生以上の棋士は永遠に現れないと誰もが思っていたのに、今、藤井君が胸のすくような活躍をしています。明らかに羽生を超えています。
ちょうど昨日と今日、王位戦というタイトル戦の第4局を藤井君が闘っているので、何か関連することを書こうと思っているうちにこういう内容になりました。
元奨は屈折していますよね …