稲荷塾の反転授業

授業を聴いて、分かったような気になっても、実際にできるようになったかどうかは分かりません。というか、ほとんどの場合は、できるようにはなっていないのです。ですから、習ったことを復習し、演習するということがすごく重要になります。

ところで、「新しいことを習う」ということと「それを復習し、演習する」ということのどちらが実行するうえで難しい作業でしょうか?

一般には「新しいことを習う」ことの方が難しいと考えられており、この難しいところを教室で行うようにしていました。そして、授業で習ったことの類題なんかが宿題として与えられ、この簡単な部分を家庭学習ですることになっていたのです。

しかし実際には、効果的な演習をするということは非常に難しいです。

まず、分かったつもりになっていることの中で、どの部分の理解が甘いのかを発見するということが難しいです。これは、できないという現状にぶつかって初めて気付くのです。そして弱点が発見できた時にはそのときこそ助け船が必要なのですが、それは自力で解決しろと言っているわけです。

 

稲荷塾の反転授業では、教室での学習と家庭学習の役割を反転させます。

すなわち、家庭学習で新しいことを学び、教室でそれを復習し演習するのです。

「稲荷の独習数学」はそれまで授業で私が説明してきたことを整理しまとめた本なので、これを読むと授業を聴いたのと同じ効果が期待できます。板書もそれをノートに写す作業も不要なので、効率よく学ぶことができます。不明な点があれば、以前のページを繰ることでその多くが解決できるので、授業を聴いたり、映像授業を見るよりずっと使い勝手がよいと言えます。

さらに、この本に即したテキストの問題を解いて基本事項を確認するところまでが家庭学習です。1週間に1回2時間の授業のために必要な予習は平均すると約3時間で、日々これに取り組むとしたら1日約30分です。つまり、従来の授業プラスちょっとした演習が反転授業における家庭学習ということになります。

教室では、家庭学習で生じた疑問を解決するのに最初の約20分を使います。

次の小テストが重要で、ここで、理解が十分ではなかったことを生徒に気付いてもらうことが講師側の目標になり、そういう問題にしています。そして、これの直しからは個別対応で行い、解答の書き方等についても厳しめの指摘をします。小テストは約20分で、その出来によって直しの時間は変わりますが最大40分にしています。つまり19時10分に授業が始まり、もし20時半に小テストの直しが終わっていなかったら、自力での直しを修了し、解答を配り、それを理解してもらいます。その後は演習問題Aと演習問題Bで演習をします。演習問題Aが授業での到達目標で、テキストの重要事項を確認することと、テキストでは扱われなかったようなタイプの問題で演習するようにしています。さらに、演習問題Aが終わってしまって、まだ時間の余裕のある諸君のためのチャレンジ問題が演習問題Bです。

結局、「新しいことを習う」ということと「それを復習し、演習する」ということでは、後者の方が難しく、その難しい部分を教室で効果的に実行するのが稲荷塾の反転授業だということになります。