来たれ特別クラスへ

どんな分野でもモチベーションが高いかどうかということが重要です。

それを北野の生徒を見ながら強く感じました。

ここ数年、稲荷塾にも北野の生徒がぽつぽつと来るようになり、彼らを見ながら考え方が変わったところがあります。

以前の考え方は以下のようでした。

 

中学数学で学ぶ量と高校数学で学ぶ量は 1 : 5 ぐらいになっており、それぞれを中学の3年間と高校の3年間、つまり 1 : 1 の時間をかけて学ぶのは理にかなっていない。

実際、高校受験をして高校生になってから高校数学を学び始めるのはすごく不利だ。

もし、数ⅠA、数ⅡB、数Ⅲのそれぞれに1年ずつかけたとすれば、中高一貫校の生徒が中3から高校数学に入り1年間の演習期間を確保するのに対し、高校受験をした生徒には演習時間というものが取れない。 だから進学校では高校課程を急いで学び、演習時間を作り出そうとする。しかしいくら急いでも半年程度の演習期間を作るのが精いっぱいだ。

洛星も高校から入学した生徒の進学実績が伸びず、結局、高校から生徒をとるのをやめることにした …

 

ところが一方中高一貫校の場合、中学受験後生徒の勉強へのモチベーションが落ちるのが一般的です。一つは大学受験が中1生にとって非常に遠いこと、それから中学に入るとクラブ活動等の楽しいことがいっぱいあり、それを優先するようになりやすいこと、さらに、中学受験のときは塾がやるべきことを準備してくれて、それに従っていればよかったのに、中学合格後はいろんなことを自己管理でこなさねばならす、それが難しいこと、いろんな理由がありますが、結果として中高一貫校の中学生の多くが定期テスト前だけ詰め込み学習をするというスタイルに落ち込んで行きます。

そうして、もし中高一貫校で落ちこぼれるようになれば、その中学に受かったというプライドと落ちこぼれているという劣等感とが入り交じり、抜け出すのが非常に難しい複雑な心理状態になります。

ですから、中高一貫校の生徒の場合、適切な勉強習慣を身につけて、ある程度の上位をキープすることが大切で、そうすれば高2の夏過ぎぐらいから受験を意識した勉強を始めて、合格コースに乗ることができます。

ただ、それがそんなに簡単ではなく、中高一貫校の有利さを活かせていない生徒も多いということです。

 

それに対して北野の子は京大に行きたいから北野を目指し、受かったならば、そのままの勢いで頑張り続けます。もちろんクラブ活動も盛んで、それに打ち込みつつ勉強も頑張るのです。勉強へのモチベーションが下がるということはありません。

結果として、高校生になってから高校数学を始めるという不利を跳ね返して合格していくのです。

 

モチベーションを高く保つことが重要だということです。

 

これが特別クラスを作るための一つの動機になりました。

 

稲荷塾の反転授業では数ⅠA、数ⅡB、数Ⅲのそれぞれを半年で学ぶことができるので、高校受験後高校生になってから高校数学を学び始めたとしても1年半で高校課程を学び終えることができます。

つまり、1年半の受験を意識した演習をすることができます。これは北野や堀川が半年間の演習期間を作っているのに比べて随分有利です。

 

ところが、北野の生徒はエネルギーが高く、1年半で高校課程を学んでしまうことを苦にしていないばかりか、もっとレベルを上げても大丈夫そうな生徒もいるのです。

もちろん演習は2年間するのが理想的です。

高校課程を学び終えてから入試の基本技術を身につけ阪大や神大の問題がすらすら解けるようになるのに平均的に1年かかり、その後東大・京大の問題が解けるようになるのにやはり1年ぐらいかかるのが平均的なところなので、この「2年間」という数字が出てきているのです。

もし2年間の演習期間を作るとすれば高校課程を1年で終えなければなりませんが、これが可能な生徒がいっぱいいることを北野の生徒を見ながら感じました。

 

それで特別クラスを作りました。

その他の反転授業のクラスでテキストを週に2ページ進むのに対して、特別クラスではテキストを週に3ページ進めれば1.5倍進むので、1年間で高校課程を学び終えることができます。

反転授業のクラスでは予習のために平均的に1日30分勉強することが推奨されていますが、特別クラスでは1日平均45分勉強すればよいのです。この数字は個人差があり、もっと短い時間でこなせる生徒もいるでしょう。

 

それで実際的なところはどうだったのかと言うと、数ⅠAをやっているときは余裕だと感じました。

数ⅡBに入ると覚えることも多く、余裕はなくなったと感じました。特に数列では苦戦する生徒が多かったので、少し進度を遅らせてでも演習の時間をもつ必要性を感じました。今年度はそれができなかったので、新年度からは改善しようと思います。

数Ⅲでは進度が遅れ始める生徒も出ましたし、小テストの成績も数ⅠAのときのように快調にはいかなくなりました。

それでもトータルすると高2から演習を始めるのに十分なところまで来れたと思います。

最低限言えることは学校の勉強が楽になったということです。当然順位も上がりました。

これから演習クラスに入ると予習の負担が急激に減ります。その分を復習や他教科の勉強に充てればいいと思います。

いずれにしても、学校の周りの友だちがこれから数ⅡB、数Ⅲの新しい概念を飲み込みそれを覚えるためにエネルギーを使っているときに、入試問題による演習を通してこれまで学んできたことを使う練習をするのです。その効果は、本人自身が驚きをもって実感することでしょう!