石の上にも10年

関西の私立のトップ中学は、昨年あたりから相次いで中2のどこかから高校数学に入るようになりました。

これは大きな変化で、それ以前は灘以外はみんな横並びで中3から高校数学に入るようになっていました。

これが全国的な現象なのかどうかはまだ分かりません。ご存知の方は教えてください。

 

まず、基本的な考え方を整理しておきます。

中学数学と高校数学で学ぶ量を比較すると大体 1 : 5 ぐらいなのに、それぞれを学ぶのにかける時間の比は非常に不自然な比になっています。

たとえば公立中学から公立高校に進んだ場合は1 : 1 です。これは中学までが義務教育であるということと関係しているのかも知れませんが、今や高校までが義務教育だと言ってよいぐらいになってきており、そうすると、多くの生徒が高校に入ってから数学が急に難しくなったと感じるのです。5倍の量をこれまでと同じスピードで学ぶわけですから。

中高一貫校ならば中3から高校数学に入っていましたから、かける時間の比は 1 : 2 です。公立中学より随分ましですが、灘と比べると見劣りがします。なぜなら数ⅠA、数ⅡB、数Ⅲのそれぞれに1年ずつかけたとすると、灘は2年間の演習期間をもつことができ、他は1年間です。

大学受験という観点から見れば、これは圧倒的差です。

 

以上が稲荷塾の主張で、これを2010年夏に出版された「小さな数学塾のヒミツ」で書きました。この本はエッセー集ですが、その中の一項目としてこの話題を取り上げたのです。

さらに2014年1月に出版された「頭のよい子には中学受験をさせるな」では、本格的にカリキュラムについて論じました。

これら2冊の反響は想像以上に大きく、東洋経済やプレジデントファミリーの雑誌に取材記事が載ったり、高校の先生や塾関連の方から問い合わせがあったり、そのうちの7人の方が稲荷塾に見学に来られました。全国の多くの保護者の方々からの連絡を含めると相当の数になります。

 

しかし

 

2010年から10年近くが経っても世の中は全く変わらず、結局稲荷塾がもっと力を付けるしかないのか … と感じていました。

ところが昨年になってから突然、あちこちの中学で中2の秋から高校数学に入るようになったといったような変化の声を聞くようになったのです。

きっとこの流れは加速します。

なぜって、その方がいいに決まっているからです。

 

稲荷塾もますます頑張っていきたいです。