稲荷塾の反転授業

今回は稲荷塾の反転授業について書きます。

 

まず、数学の通常授業には無駄が多いです。

これに気付いた経緯から書くことにしましょう。

稲荷塾の場合、途中入塾の生徒に対して適当な補習をすることで既成のクラスに入れるようにしていますが、2015年の秋、数ⅡBのクラスに入ろうとしていた生徒に対して相当量の補習をしても既成のクラスに入れるのが難しいということがありました。それで仕方なく、彼女には土曜日に来てもらって個別で数ⅡBの授業をすることにしました。

しかし、1人のために授業と同じ内容を話すことを面倒だと感じたとき、ぴんとひらめきました。「稲荷の独習数学」を使えばよいと。

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これはその2015年の夏に出た本ですが、私が授業で話してきたことを整理してまとめた内容になっています。つまりこれを読んで来てもらえば一から説明する必要はなく、分かりにくかったところを解決するところから授業を始めることができます。

はたしてこの個別指導はすいすいと進み、テストをしても彼女の成績はかなり良かったのです。

そして遂に年度末には通常授業の進度を追い越しました。要するに2倍以上の進度で進んだということです。

彼女の理解力が特別に良かったわけではありません。

 

一体どうしてこのようなことが起こったのでしょうか?

 

結局気付いたのは通常授業には無駄が多いということです。

通常授業では新しい概念を伝えるために板書をし、生徒がそれをノートに写してから説明が始まりますが、この「板書」と「ノートに写す」という作業の時間が授業全体の半分ぐらいを占めています。

もし、授業でする説明が本にまとめられているとすれば、「板書」も「ノートに写す」ことも不要となります。つまり、大幅に無駄を省いた状態となり、授業では説明後の分かりにくかった部分を解決することからスタートできるのです。

結果として通常授業の2倍の進度で進むことができるようになりました。

しかも、生徒の成績上がりました。2倍の進度で進んでいるのに。

 

教室で新しいことを学び、家庭でそれを定着させるという教室と家庭学習の役割を反転させるのでこれを反転授業と言います。

アメリカのような広い土地では教室に通いにくいところに住んでいる生徒も多く、そういう生徒に映像授業を提供し、ときおり教室に集まって学んだ内容を深めるという試みで反転授業は始まったようです。

これとよく似ているので「稲荷塾の反転授業」と呼びます。しかし稲荷塾では映像授業ではなく「稲荷の独習数学」を用います。

結果としてこれが良かったです。

 

「分かった」ということと「できる」ということは全然違うことで、分かりやすい授業をすればするほど生徒は分かったつもりになるだけで、なかなかできるようになりません。

映像授業もこれと同じことで、「それを見て来る」ではどうしても受け身の姿勢になり、予習の質が上がりません。

解説を読んだ後、問題を解いてみて、詰まれば再び解説に戻り … という作業の繰り返しにより次第に「できる」という状態に近付くのですが、それを「予習」として課すのです。生徒は数学の単元を学びながら勉強のイロハが身に着いていきます。

授業では予習段階で生じた疑問を解決するところから始めます。次いで小テストで理解を確認します。

当初は覚えるべきことを覚えてきているかどうかを確認する程度の小テストをしていましたが、今は到達目標を示すような問題を出題するにしています。つまりかなり難しいです。「生徒は理解したつもりで授業にやって来ますが、小テストの問題が解けず、予習が甘かったことを悟る」となることを期待しています。

小テストの後はその直しをします。

直しが終われば、最後に補充プリントで演習をします。

 

2単元ごとに単元テストを実施し、単元テストの平均点で次に進むことができるかどうかを決めます。

たとえば数ⅠAの単元テストの平均が50点以上なら、数ⅡBに進みます。これは大体、河合の全統高1模試で偏差値が70程度のレベルで、中2生でこれを半年でクリアできる生徒は少ないです。

平均点が30点未満ならもう一度数ⅠAをやり直します。すると1回目で苦戦した生徒も2回目のときはいい成績をとれるようになっていることが多いです。

30点から50点の場合は、その生徒の学年や成績が上昇傾向にあるかどうかなどを判断材料として数ⅡBに進むかどうかを決めます。つまりその生徒が高1だった場合は成績が悪くとも数ⅡBに進むほかはなく、中2だった場合はじっくり取り組む、すなわちもう一度数ⅠAをすることを選択します。

 

予習がどの程度大変かはその生徒のレベルによって大きく変わります。一応の目安は、1日平均で30分程度の時間をかけることです。

できるだけ日々こつこつと進めるのがお勧めですが、実力が不足している場合はそのようにすることが難しく、土曜日に来てチューターに助けてもらいながら予習をしている生徒もいます。

 

この反転授業を発展させたものが「特別クラス」で、1年間で数ⅠA、数ⅡB、数Ⅲのすべてをやってしまいます。つまり通常授業の3倍で進むわけですが、ある程度のレベル以上の生徒であれば十分に可能で、これについては数日前のブログに書きました。

 

また、通常授業に無駄が多かったことを知り、それを改善する方法があったので、演習の授業ももっと効果的に行うことができるのではないか思い始めました。

次回は演習の授業について書きます。