中高一貫校と高校受験がある高校の課題の違い

中高一貫校の生徒が直面する課題と高校受験がある高校生の課題はまるで違います。

中高一貫校の生徒、特に中学生は勉強へのモチベーションが上がりません。

もちろん、中学受験をしたときの勢いを持続する生徒も一部います。このグループには2つのタイプがあり、1つは知的好奇心にあふれ、新しいことを学ぶことに楽しさを感じるタイプです。もう1つは、他と競い合うことに刺激を感じるタイプで、中学受験の世界で勝って来た喜びを味わい続けたいと考えます。

しかし、大半の生徒はまずは一休みしたいと願うのです。

それに、中学に入るとクラブ活動とか楽しいことがいっぱいあるし、大学受験は遠く彼方にあり、すぐに頑張る必要があるとは感じられません。さらに、中学受験をしたときは塾が何をどうすればよいか、教材からペースまで全部管理してくれたのに対して、中学に入ってからはそういったことを自己管理しないといけなくなり、それがそんなに簡単ではありません。こういう中でクラブの先輩が、勉強なんて定期テストの前以外はしなくていいよ、などと言ったとしたら、ほぼ間違いなくそのようになっていくでしょう。

ですから、同じ中学受験を潜り抜けて来た生徒だったとしても、その学力差は1年もしないうちに驚くほど大きな差になって行くのです。

これが中高一貫校の課題です。

一方、高校受験をした場合は別の課題にぶつかります。

数学の進度です。

高校受験のために勉強したことの大半はその後にプラスとして働きます。

しかし数学だけは、中学数学を究めたことが高校数学を飲み込む上でそんなに有効でないばかりか、高校数学に入るタイミングが中高一貫校に対して1年以上遅れることが大きな足枷になります。

高校課程が推奨しているのは高1で数ⅠAを学び、高2では数ⅡB、高3で数ⅢCということになっていますが、これは大学受験を考える上で論外のやり方です。

高校課程を修了してからの演習期間が取れないからです。

各単元を学んでいるときにいくらそれを深く掘り下げても、時が経つと忘れて行くようになっています。本当に使いこなせるようにしようと思えば、全体を学び終えた後の演習が必要になります。

ですから、堀川や北野では高3の夏休みに入るまでに高校課程が終わるようにして、半年間の演習期間を作っているのです。

しかし実際には、半年の演習では全然足りません。

稲荷塾では2年間の演習期間が必要だと考えています。大学入試で要求される知識と技術を完成させるのに、平均的な京大・東大合格者で1年ぐらいかかります。その後、京大・東大タイプの問題が解けるようになるのにやはり1年ぐらいかかり、結局、高校課程を修了してから無理なく勉強して京大・東大合格レベルに到達するのに2年ぐらいかかるということです。

これを半年でしようと思うと、相当無理をしなければならなくなります。

それから、高3になっているのにまだ数ⅢCが終わっていないことにはもう一つ重大が問題があります。

数ⅢCは覚えるべきことが多く、これを覚え切り、使えるようにするにはかなりの演習時間を要します。ですから、高3になってからなお数ⅢCの新しい単元を学ばないといけないのでは他の教科にかけるべき時間が削られるのです。

この悪い影響は特に理科に出ます。

理科は時間をかければかけるほど点が取れるようになり、しっかり対策してやれば7割以上の得点をするのは難しいことではありません。ところが、理科に時間をかけることができないと、そうすることができず、結果として5割台で終わることが多くなります。

浪人生はほぼ間違いなく7割以上の得点をするので、京大の工学部であれば下手をすると50点以上の損をすることになるなるのです。

京大の医学部であれば、さらに相当に高い完成度が要求され、理科で8割以上の得点をしなければならないと考えてよく、高3になってから数ⅢCをやっているようではこのレベルに到達するのはまず無理です。

この高校数学に入るタイミングの1年以上の遅れをどう克服するかが高校受験をした場合の課題になります。