最難関の数学

長年の夢が一つ叶いました。

978-4-325-24133-1

この本を作るための具体的な作業に入ってからは4年ほどですが、構想を練り始めてからだとかなり長いです。

2015年に出版された「稲荷の独習数学」より前からです。

「稲荷の独習数学」も初めは講談社のブルーバックスから出すということで話を進めていましたが、最後の最後にそれが流れて、これを出すための準備として仕方なく「小さな数学塾のヒミツ」と「頭のいい子には中学受験をさせるな」の2冊の本を先に書きました。ですから、そういう準備も含めると、完成までに10年近くかかったことになります。

ということで、「最難関の数学」の製作期間は18年ぐらいです。

今日はこの本を構想するきっかけになった出来事について書きます。

 

1994年に予備校講師になって、D先生に出会いました。この方は、京大の文理合わせて11問の模範解答を約1時間で作ってしまいます。問題文を読み終わるなり鉛筆がカンカンカンと走り出すのです。D先生がう~ん、と考え込んでいる姿は見たことがありません。

まあ、圧倒されましたし、憧れました。

それでまず、自分自身が勉強しようと思いました。D先生は京大の理学部数学科でドクターまで行かれていることもあり、問題の背景まで知り尽くしているように見えました。ですから、この圧倒的な知識の差を埋めることが先決だと考えたのです。

しかし、それはあまりにも遠い道のりであり、しかもその努力をしたからといって問題を解く能力が劇的に向上するわけでもなく、悩みましたねぇ …

おそらく、予備校業界にはD先生のような能力を持った方が相当数いるはずで、そういう人たちが書いた冴えた解答を見て、感動しつつも、どうしたらその発想が自分でもできるようになるのだろうかと苦しんだのです。

 

それから2年ほど経ったある日、転機が訪れました。京大の医学部を受験するという生徒が講師室にやって来て、目を輝かせて言うには、私の授業を聴いて数学の問題が解けるようになったと。

彼は数学に課題を抱えており、それまで京大オープン、京大実戦の数学以外の成績が偏差値75前後であるのに対して数学は65程度だったそうです。

しかし、「素直に問題文を読めばよかったんですねぇ!」かなり彼は興奮していましたが、私のアドバイスを実践して数学でも偏差値が75を突破するようになったというのです。

素直に問題文を読む、そんなアドバイスをした覚えがなかったので、彼が何を言っているのかを尋ねる必要がありました。

すると、勉強量に自信のあった彼は、どのテクニックを使うべきかと視点で問題文を読んでいて、それが機能しないことが多かったというのです。ところが「問題を素直に読む」ようになって、急に解ける問題が増えたということのようでした。

 

問題の読み方、問題文の分析の仕方 …

これはまさに、D先生のような冴えた解答の作れない私が模索してきた問題へのアプローチ法でしたし、多くの受験生にとっても必要な方法であることを悟った瞬間でした。

以来、この方法を整理し、深めること、さらに、その他の有効な方法を探すことが私のテーマになりました。

もちろん、受験生として最低限の知識は必要であり、それを増やす努力は続けるべきですが、それ以上に重要なことは問題へのアプローチの仕方を知ることです。

「最難関の数学」はこの、問題へのアプローチの仕方を説明しています。

この本を読めば、それまで難しいと感じていた京大・東大の問題が急に普通の問題に見えるようになります。

京大・東大の全受験生に届けたい、お勧めの1冊です!