北野と堀川

東大寺が来年から高校受験をやめます。

洛星もかなり前に高校からの入学をやめました。

なぜでしょうか?

東大寺が高校受験をやめる理由は定員割れだそうです。たとえば、北野や堀川に同時に受かった生徒の多くは公立のトップ高校に進学します。

一つは京都や大阪から見ると東大寺が地理的に遠いこと。

しかし、もっと重要な点は、公立トップ高校から自分が志望する大学を目指すことができるようになったことです。

洛星が高校からの生徒を取るのをやめた理由は、中学から入った生徒に対して高校から入った生徒の進学実績が悪く、遂にこれを改善することができなかったからです。

これは洛南でも同じです。かつて、高校から入って来た生徒をⅢ類A、Bと分類していましたがBでは50人のクラスのうち47人が浪人したなどという記録もあるそうです。今は1クラスの人数も減らしたようですし、名称も空と海と変更になりましたが、やはり、高校から入った生徒が受かっていないという状況は変わっていないと聞きます。

さらに、高校受験で洛南と堀川に受かった生徒は、基本的に堀川に進学します。当然、高校から洛南に入った生徒が大学への合格実績を出すのが難しくなります。

 

じゃあなぜ、北野からはたくさん京大に受かるのでしょうか?

もちろん、優秀な生徒が北野に集まっていることも理由の一つですが、もっと重要な点は北野の文化です。

京大に行きたいから北野を目指し、受かったら、ますます頑張って勉強するという空気が出来上がっています。

中高一貫校より1年も遅れて高校数学を始めるので、一見すごく不利ですが、それを跳ね返すだけの勢いがあります。実際、北野の高1の生徒と洛星の高1の生徒が机を並べていると、どう見ても顔つきに1学年以上の差があるように見えます。

中高一貫校と高校受験のある高校では課題が異なり、中高一貫校は高校数学に入るタイミングにおいて有利な状況にある一方、中学入学後に勉強へのモチベーションが大きく下がってしまうという問題があります。

ですから、中高一貫校と高校受験のある高校では、統一した文化を作るのが難しく、中高一貫校が高校からも生徒を受け入れようとすると、高校から入って来た生徒が大学に受かりにくくなります。

文化の統一、これは重要です。

たとえば、西京は高校から入って来た生徒の進度が中学から入った生徒のそれに追い付くまで、中学から入った生徒を待たせます。じゃあ一体、何のための中高一貫校なのか、と疑いたくなりますが、これにより中学から入った生徒と高校から入った生徒に一つの文化が築かれます。それで近年、実績が伸びて来ています。

これに対して、洛北は文化の統一に失敗しています。まず、中高で担当する先生が変わります。洛北高校はスポーツ系のクラブが盛んで、ハンドボールなどは全国的にも有名です。つまり、それを目指して洛北高校に入学してくる生徒がたくさんいるということで、中学から入った生徒とはまるでベクトルが違うのです。中学から入る生徒数が少ないこともあり、学校として京大・東大を目指すという雰囲気にはなりません。だから実績は下降気味です。

北野はこの文化作りに成功したと言えます。1学年360人、成績的に下の方でも結構優秀です。

 

それに対して堀川は発展途上です。

半分ぐらいは優秀ですが、それ以下は急激に学力が下がります。

堀川に入ることが最終目標で、入った後、頑張らない、あるいは頑張れないという生徒が多く混じっているのです。

 

正直言って北野の生徒には驚かされました。と言っても、稲荷塾と北野は地理的に遠いので、1学年に1人いるかどうかという感じですが、来る生徒来る生徒、みんな同じような雰囲気を持っているのです。ほとんどの生徒はクラブも一生懸命やっていて、疲れることもあると思いますが、やるべきことはきっちりやるのが当たり前だと考えているのです。

これを見ながら、7年前、稲荷塾では高校受験をした生徒が不利にならない方法を考えることにしました。

反転授業を利用して、高1の1年間で数ⅠA、数ⅡB、数Ⅲの高校課程を全部終わらせて2年間の演習期間を作る方法です。

大成功でした。

その後、これに改良を加えて、今では高1の1年間で数ⅠA、数ⅡBをし、高2の上半期で数ⅡBの演習、高2の下半期で数Ⅲをするようにしています。高1での負担が減ったのと、数ⅡBを固めておくと数Ⅲを飲み込むのが容易になるところがメリットです。

このままだと演習期間が1年半になりますが、ほとんどの生徒が高2の下半期で数Ⅲをするときに数ⅡBの演習も継続するので、そうすると2年間の演習期間を確保することができます。

これだと、高校受験をした生徒でも、すなわち高校数学を始めるタイミングが遅くても演習期間を確保できるので不利にならず、持てる力を発揮しやすくなります。

そうでなければ、北野でさえ、高校課程が終了するのが高3の夏休み前なので、演習期間は半年です。まあ、命懸けの受験勉強になりますし、理科にかける時間が不足して取りこぼすようなケースも増えます。

 

3月5日、次の日曜日が入塾説明会なので、稲荷塾のシステムや考え方などをまとめてみました。