進学校でない高校からの京大受験
今年、シュンカイが桃山高校から京大の理学部に受かりました。
シュンカイというのは田中君のあだ名です。
彼は小5から稲荷塾に通い始め、中2で高校数学に入ったときに落ちこぼれました。
稲荷塾では半年で数ⅠAを学びます。そこで河合の全統高1模試で偏差値70レベルの実力になれば数ⅡBに進み、そのレベルに届かなかった場合はもう一度数ⅠAを半年かけて学び直します。
中2生で半年で数ⅠAを卒業できる生徒は稀です。大半は2度目の数ⅠAをとることになり、結局1年かけて数ⅠAを学ぶのです。すると、望むレベルに到達する確率が劇的に向上します。
もしそれが公立中学の生徒であれば、そこで一旦高校数学の勉強をストップして高校受験の準備をします。つまり、1年間稲荷塾をやめて、高校に受かってから戻って来るのです。しかしその時には数ⅠAを終えているので、数ⅡBから始めることができるのです。これが中2で数ⅠAを学ぶメリットですが、もう一つ重要な点は、中学数学のほとんどが数ⅠAの中に入っているということです。すなわち、数ⅠAを飲み込む努力をした生徒には高校受験の問題が非常に易しく見えるということです。
一応、これが理論なのですが、シュンカイの場合、2度の数ⅠA受講で大きな向上を示すことができず、いつもおじさまに怒られていたのです。
一度、シュンカイと呼ばれることに対して「しゅんすけです …」と抵抗したことがありましたが、「お前はシュンカイだ」とおじさまに押し切られたのです。
まあ、いじめていたわけです。
ですから、正直言って高校に受かってから戻って来るとは思っていなかったのです。
なのに彼は戻ってきました。当然のこととして、数ⅡBから始めることはできず、数ⅠAからやり直すことになったのです。
ところが、そこからの快進撃は信じられないほどでした。まるで別人になったかのようにぐんぐん伸びました。
気付くと、彼の自信のなさそうな表情が賢そうに見えて来るではありませんか!
高2が終わるころ、1つ年上の生徒と一緒の直前演習に参加して、東大理Ⅰに受かった子と互角の成績をとるようになっていました。
数学ができる生徒は基本的に物理ができます。何か通じるところがあるのです。
ですから、彼のことを楽勝コースに入ったと思っていました。
ところが、そうではありませんでした。
それに気付いたのは高3の夏前です。彼ができるのは数学だけで、英語も国語も学校で最下位。ついでに理科も全然ダメでした。
ですから、理科の勉強についてくどくどと話し、夏休みが終わるまでにこれだけをやるようにとノルマを与えたのですが、夏休みが終わってどの程度やったのかを聞くと、私が指示したことの半分もできていませんでした。
そこで作戦を修正し、11月の冠模試までに最低限こなすべき基準を示したのですが、やっぱりできませんでした。
ということで、最終手段として12月の終わりごろ彼を授業後残して、理科の問題集を渡し、正月明けまでにこれをやって来ないと首を絞めると脅したのです。
で、やったんでしょうかねぇ …
それは5月の開示のときまでのお楽しみとして残しておくことにします。
数学は満点でした。それだけで受かった可能性もあるので …
京大の理学部は50人ずつのクラスに分かれることになりますが、私が見る限り、そのうち5人ほどはとんでもなく優秀です。正直言って頭の構造が違うんじゃないかと思うほどに。普通の京大生が30分ぐらいかけてやっと1ページを理解するような専門書を、彼らはあたかも小説を読むようにすらすらと読んでいくのです。
ということは理学部300人中30人ぐらいはすごい奴がいるということになりますが、シュンカイの数学はそういうレベルです。
こんな奴をもし京大が落としたとしたら、それは入試自体が機能していないということになります。
ですが実際は、受かるかどうかは運次第というぐらいぎりぎりでした。
なぜでしょう?
なぜ彼の成績はそこまで偏っていたのでしょうか?
私が思うに、それは彼が桃山高校の生徒だったからです。
周りに京大を受けるような生徒がいっぱいいるような環境にいれば、共通テスト対策にはどの程度の時間を割くべきかといったような受験情報が勝手に耳に入ってきて、いわゆる空気ができるのです。するべきことを周りのみんながやっていれば、それが普通のことになります。それが空気です。
たとえば、洛南の生徒で共通テストで取りこぼす子はほとんどいません。
ところが、進学校でない高校に通っている生徒は、理科の勉強やら何から何まで自分で意識して行動しないといけないのです。ですから共通テストで失敗したり、理科の対策が遅れたりというようなことが起こりやすいのです。
ともあれ、シュンカイが受かって本当に良かったです!