京大の数学を解いて
1993年と言えば、私が初めて京大を受験する生徒を担当したクラスの子たちが受験した年です。
ちょうどその年、京大に総合人間学部が誕生しました。
教養学部を廃して1回生から専門科目を学ぶことができるようにしようという動きの中でのことだったと思います。でもそうすると、教養を教えていた先生たちが大量に失業することになります。それはまずいので総合人間学部というものを作ったように見えました。
実際18才の段階で何を専門にするべきかを決めかねている生徒は多く、大学に入って、いろいろと自分の目で見る中で専門を見つけたいと考える生徒には魅力的だったと思います。
ですから、そんな専門もはっきりしないようなものはダメだろうという予想を覆して、結構の人気の学部になりました。
実は思歩も総人の出身です。工学部を受験するつもりだったのが、受ける4カ月前ぐらいに「哲学や心理学のような文系方面の勉強がしたい」などと言い出したのです。理系科目しか勉強していない者が文系関連の学部に入るとしたら総人しかないのです …
それから、2002年か2003年だったと思いますが、京大医学部に保健学科ができました。医療技術短期大学が募集を停止し、それが京大医学部に吸収されることになったのです。今では保健学科は人間健康科学科、略して人健として定着することになりました。
しかし、落ち着くまでが大変でした。
何と言っても、他学部との学力差が大きく、同じ試験で入試を行うのが困難だったのです。ですから初めの数年は数学の問題を甲乙2種類準備して別の問題で受験するようにしていました。でもそれは出題する側が面倒だったのだと思いますが、結局同じ問題で入試を行うことになりました。
これにはひどく失望させられました。なぜって、すごく簡単な問題になったからです。ある年なんかは150分の試験時間で行う問題が40分で解けてしまいました。こんなん、京大の問題じゃない、と怒りさえ覚えました。
そうそう、当時、稲荷塾のテキストに不満を言った生徒がいました。こんな難しい問題は実際の入試では出ないと。
その後、6問中3問か4問は簡単な問題で、残りはかつての京大の問題タイプが出題されるという形になり、これは入試として機能しています。
ただ、簡単な3問か4問を確実に解いて、他教科で勝負するという方法が生じるようになったので、私としては多少不満でしたが …
まあしかし、人健のレベルも上がってきて、かつてほどの大きな学力差がなくなって来たのに伴い、数学の入試問題も以前のものに近付いてきたように感じていました。
ところが、今年はどうしたことでしょう?
6問中5問が簡単だったのです。それなりに処理が面倒なところはありますが、見ただけで方針が立つ問題が多く、これが京大の問題だと言うにはあまりにも貧弱です。
おそらく、去年の文系の問題が難しく、下の方で固まってしまったという反省があったのかも知れません。数学が苦手なときちゃんなんかがラッキーしたという面もありましたが …
ということは、次は難しくなる方向に振れるだろうと予想されます。外れるかも知れませんが …