稲荷塾の反転授業 その1

稲荷塾の反転授業について書きます。

まず通常授業、すなわち、新しい概念や技術を黒板に板書しながら説明する方法は無駄が多いです。

通常授業では講師が板書し、生徒がそれをノートに写すという作業の時間が授業時間の約半分を占めます。

次に、講師のスキルが上がり、分かりやすい授業をすればするほど、生徒は分かったつもりになり、決してできるようにはなりません。

生徒ができるようになるためには、演習を通して「分かったはずのことができない」という現実にぶつかり、それを克服する努力をしなければならないのですが、これを実行するためには相当のエネルギーが必要で、実際にそれができる生徒は非常に少数です。

 

では、稲荷塾の反転授業では何を反転するのでしょうか?

教室で新しいことを学び、家庭学習でそれを定着させるという教室と家庭学習の役割を反転させます。

稲荷塾には「稲荷の独習数学」があります。これは私が授業で説明してきた内容を整理してまとめたものです。これを読めば教室で授業を受けたのと同じ効果があります。

しかも、2倍以上の速度で進むことができます。「講師が板書し、生徒がそれをノートに写すという作業の時間」が要らないからです。これだけで2倍進めます。それに授業では、どうしてもそのクラスで一番苦戦している生徒をケアしながら進むことになるので、上位の生徒には必ず待ち時間が生じるのです。

「稲荷の独習数学」を読み、大体の内容が分かったならば、次にテキストの問題を解きます。本を読んで得た理解はまだまだ浅く、問題を解くこともできないし、ましてやそれを人に説明することなど到底できません。ですからテキストの問題を解いて、できないという現実にぶつかる必要があるのです。

できないという現実にぶつかれば、もう一度「稲荷の独習数学」に戻ります。多くの場合はテキストの問題の類題を探します。その説明を読み返すことで理解が一段階上がります。

「稲荷の独習数学」を読む。テキストの問題を解く。ここまでが家庭学習、いわゆる予習です。

 

では、授業では何をするのでしょうか?

小テスト、小テストの直し、演習です。

以前はこれにポイント講義を加えていましたが、だんだんそれが短くなり、今では「予習段階で分かりにくかったところ」の解決のために10分程度の説明をするのみとなりました。一つはその後の小テスト、演習の比重が高まったこともあります。でも、ポイント講義が短くなった一番の理由はテキストの解答に解説を加えたからです。よく質問される内容についての説明を解答にポイントとして付けたので、「予習段階で分かりにくかったところ」が激減しました。

それで授業ですることは小テスト、小テストの直し、演習です。

まず、小テストはどの程度の予習をするべきかという基準を示す意味があります。だからレベルは高いです。

かなりまじめに取り組んで来た諸君でも「まだ甘かったか …」と感じるような内容にしています。

小テスト後は一定時間をかけて間違ったところを直します。最初は「稲荷の独習数学」やテキストの解答・解説を読み直して自力で直す努力をします。

直せた生徒は演習問題に進みます。一定時間を過ぎて直せない生徒には解答を配ります。そして納得したらやはり演習問題に進みます。

演習問題はA、Bの2種類があります。

Aでの目標は2つです。一つは「稲荷の独習数学」やテキストにおける重要事項を定着させるということで、もう一つはそこで扱わなかったようなタイプの問題を通して幅広いタイプの問題に対応できるようになることです。

ここまでできれば授業での目標をほぼ達成したということができます。

それでもまだ余裕のある生徒のためにB問題があります。Bは基本的に証明問題です。基本的には覚えていて使えればよいような内容、例えば正弦定理や余弦定理なんかを証明できるのか、と問うのです。

 

以上が稲荷塾の反転授業の概略です。

この効果や、実際のところなどはまた次回以降に書きます。