十年一剣
演習の第2段階 東大・京大・国公立大学医学部への数学(仮題)の出版が再来年春に延期になって良かった面もあります。
それは、もう一度内容を吟味し直すことができるからです。それで、まずは手始めに演習問題を充実させるところから始めています。つまりいろんな問題を解いて、いい問題を探すところから手を付けているのですが、これが結構いいように感じています。
というのは、「うっ」と詰まる問題があるということです。
まあ、授業をする分には知った問題で回すのが効率的です。その問題のどういうところに生徒が苦戦するのかが分かっている方が、的確なアドバイスができるということです。
しかし、それだけではこちらの新鮮さがなくなっていくのです。新鮮さがなくなり、こちらが楽しいと感じていなければ、それは伝わります。当然、勢いのない授業になってしまうのです。
だから、腕を磨き続けることが大切です。
昔、南くん(南芳一将棋九段)が扇子に「十年一剣」と書いていました。かっこよかったですねぇ!
何か、一つの道を追求し続ける求道者のようで、彼の雰囲気とぴったりとマッチしていました。
思い返すと、南君は私より4つ年下で、アマチュアで敵なしの状態になり、鳴り物入りで奨励会に入会してきました。
大阪に正棋会というアマチュアのトップが集まる練習会が月に一度あり、1日で5局指すのですが、勝ち越すこと自体がなかなか大変なところでした。そこで南君は大抵5連勝、ときどき4勝1敗の成績を取っていたので、奨励会に入る前からすごいやつが入ってくると噂されており、我々としてはかなり意識して彼と対局しました。
意識していても、実力が上の者が勝つのが勝負の世界なので、南君はあっという間に奨励会を突破し、プロになっていきました。そして大活躍し、タイトルも3回獲得しました。
ちょっと自慢ですが、奨励会で南君が負け越した相手はおそらく私だけです。
なんだ、それが言いたかったのか、なんてな声が聞こえてきそうです …
まあそうなんですが、「十年一剣」、一つの道を追求し続けることが大切だという話でした。