雨はしとしと(完結編)
昨日の続きです。
どうして雨はしとしと(等速運動で)降って来るのでしょうか?
普通、物を落とすと、どんどん加速して行きます。
それは地球が物を引っ張っているからで、そのゆえに物は重力加速度 g で等加速度運動で落下すると学校では習います。g は 9.8m/s^2 となっており、毎秒約10m/s ずつ速くなるとされています。つまり、雲から落ちて来る雨は1秒後には秒速 10m になり、2秒後には秒速 20m になり、もし 8000m 上空から降って来るとすると40秒後に落ちて来ることになるので、秒速 400m になります。
秒速 400m は音速を越えています。
みなさん、水で金属を切る旋盤をご存知だと思いますが、あれは秒速 700m で水を噴射します。すると、硬いはずの金属がすぱっと切れて行きます。
秒速 400m でも相当の速さで、時速 1440km と言い換えた方が実感がわきやすいかと思いますが、この速度の雨に打たれたら、間違いなく即死します。
もう少し付け加えると、雨の日にバイクに乗ったことがあれば分かると思いますが、顔に当たる雨が痛く感じるかどうかの境目が時速 40km あたりにあります。やったことはないですが、時速 100km で当たったら相当に痛いと思います。ましてや、時速 1440km だったらどうなるでしょうか?
まあそういうことで、雨はかなり危険な現象なわけです。学校の理科の説明によると。
ところが、そんなふうに感じている人は誰もおらず、雨がしとしとと等速運動で降って来ることをみんな知っているのです。
どうしてでしょうか?
これが今日のテーマです。
これを理解するために、まず運動方程式を知る必要があります。
F=ma
です。
これは、原因と結果を表す式で、F という力が原因で m という質量を持つ物体に a という加速度が生じることを主張しています。
昔は力に比例した速度が生じると信じられていましたが、それは誤りで、力に比例した加速度が生じることが実験的に確かめられました。そうすると、質量とは加速されにくさを表す比例定数だということになります。
さて、この運動方程式を使って「雨はしとしと」を考えてみたいと思います。
まず、物体は地球に引っ張られ mg という力を受けます。それが原因で物は落下するわけですが、物体に働く力はそれだけではありません。落下し始めて、速度が増してくると、その速度に比例した粘性抵抗を受けるのです。
空気があるからです。
ゆっくり進んでいるときは、この空気による抵抗を感じることはありません。
しかし、速度が増してくると、たとえば自転車を全力でこいでいると、かなりの風圧を受けます。これを空気による粘性抵抗と言いますが、経験的にも分かる通り、この力は速度に比例して大きくなります。
したがって、運動方程式は
mg-kv=ma
となります。ここで v は速度で、a は生じた加速度です。地球に mg の力で引っ張られ、速度に比例する粘性抵抗という力 kv を反対方向に受け、その結果 m という質量に a という加速度が生じるという意味です。
a=v’
つまり、加速度は速度を微分したものですから
mg-kv=mv’
が運動方程式になり、この微分方程式を解くと、
となります。
よかったですねぇ!
雨が降りそうになると警報が鳴って、地下シェルターに避難しないといけないようではやってられないですから。