「演習」の意味

数学では一般化することとそれを具体的事象に適用することが重要です。

まず一つ例を挙げます。

どうして長方形の面積は「縦かける横」で求めるのでしょうか?

1cm×1cm の正方形の面積を1平方センチメートルと呼び、これを単位としてたとえば縦 3cm、横 4cm の長方形であれば 3×4 つまり12個の1平方センチメートルがあるから12平方センチメートルになると理解します。これが第一段階で、縦、横の長さが1cm の整数倍でなくても「縦×横」で長方形の面積を求めることができると理解します。次に単位までも一般化し、記述しなくなります。

こういう思考が「一般化」です。

次にパスカルの三角形 nCk+nC(k+1)=(n+1)C(k+1) を学んだとして、10C5+10C6 は 11C6 と直せることが分かるのは、一般化されている事実を具体的事象に適用している例です。

さらに 10C10+11C10+12C10+…+20C10 をパスカルの三角形を使って (11C11-10C11)+(12C11-11C11)+(13C11-12C11)+…+(21C11-20C11) と変形して(ただし 10C11=0 とする)、この結果が 21C11-10C11=21C11 だと分かるのは、どのような場面でその「一般化されている事実」が使えるのかということまで含めて理解して「具体的事象に適用」している例です。

この一般化のための思考とそれを具体的事象に適用する訓練が「数学を勉強する」ということです。

 

それで、この「一般化の思考」と「具体的事象に適用」のどちらが難しいでしょうか?

一般的には「一般化の思考」が難しいと思われているだろうと思いますが、上の例でも分かると思いますが、数学を苦手としている諸君のほとんどが「具体的事象に適用」のところで苦戦します。

「同じじゃないか?!」

「同じ規則を適用するだけじゃないか?!」

と思われるところで、彼らは動きを止めるのです。

あるいは、もっと初歩的な規則の適用でミスを連発するような生徒もいます。

 

結局、この「適用」のトレーニング、すなわち「演習」ということが数学ではとても大事だということになるのです。