中学数学のクラスでも反転授業開始

数学の授業で新しい概念や技術を説明するために、通常、板書とそれを生徒がノートに写すという作業が必要になります。

しかし、この「作業」の時間が占める割合が高いのが問題です。私の経験では授業時間の約半分は「作業」の時間になっていました。

それで、稲荷塾の反転授業が始まりました。

「稲荷の独習数学」は私が授業で説明していたことをまとめ、整理することで作られました。つまり、これを読んで来るということは、予め授業を受けてくることに相当します。板書もそれをノートに写すという作業も不要です。

ですから2倍の進度で進むことができます。

 

一般に「反転授業」では映像授業を用います。元々、反転授業は教室に通うのが大変な地域に住んでいる生徒のために考案されたので、当初は通常授業をビデオ録画したものを使っていたはずで、その後、これは効率の良い授業方法だと認識され、反転授業用の講義ビデオが作られるようになりました。

しかし、反転授業のために映像授業を使うより、授業内容がまとめられた参考書を使う方が何倍も効率がいいです。本でならば、分かりにくい部分を理解するために前の説明に戻ったり、十分に分かっている部分はささっと読み進めたりすることが自在にできるからです。

それに、映像授業は「分かりやすい授業」を是として作られていますが、いくら分かりやすい授業をしても生徒ができるようにはなりません。

「分かる」と「できる」は違うのです。分かったことを使って実際の問題を解こうとして、「できない」という現実にぶつかり、それを克服するための努力をする中でできるようになるのです。

ところが、分かりやすい授業を聴いてしまうと、できるようになった気がしてその努力を怠るのです。

分かりやすい映像授業を観るより、本で学習する方がエネルギーが要りますが、それがいいのです。

そして、教室に来てからは理解が甘い部分をぶすぶすと刺すような小テストを受け、間違った部分を直し、演習問題A、Bで仕上げていくのです。

 

一般の数学の授業にすごく無駄が多いということに気付いたとき、きっと、授業の効率を劇的に上げる方法があると直観しました。

実際にメソッドが確立するまでにはかなりの時間がかかりましたが、稲荷塾の反転授業はまさしくその「授業の効率を劇的に上げる方法」です。

 

ただ、これを実現させるためには「通常授業で説明していることをまとめ、整理した」参考書が必要ですし、授業で使う小テストや演習問題も準備しないといけません。

ですから、中学数学のクラスでは反転授業を実行することができませんでした。

 

しかし、遂に新年度から中学数学のクラスも反転授業にします。

「独習中学数学」を読んで来て、それに対応するテキストの問題を解き、小テストを受けることで、どんどんと理解を深めていきます。半年で中学数学全部を学ぶことができるはずです。

そして一通りの学習が終わったら、これまで使っていたテキストの問題で演習をします。

目標は中2から高校数学に入ることですが、その基準は、その時点でトップ高校に合格する程度の数学力を身につけていることです。