「整数の性質」が指導要領に入って今の受験生はよかったですね
松谷です。
先日、演習1の講義に参加させてもらっていたとき、整数問題が昔範囲に入っていないときの話が稲荷先生から出ていました。
それは、本当にここ数年の話でして、それまでは、整数問題は、学校でほとんど習わないのに、入試で出るという非常にやっかいな範囲でした。
もちろん、最大公約数とか最小公倍数とか√3が無理数の証明での互いに素とかそれくらいは習いましたけど、学校では、ほんとその程度の学習にとどめられていました。
一方で、入試では、東大や京大(阪大?)の入試問題で、平気な顔をして、
不定方程式やmodやユークリッドの互除法、p進法などを背景とした問題もしくはそのものの問題が出題されて、
雲をつかむような感じがして、運がよければ解ける運が悪ければ解けないというような問題となっていました。
僕は稲荷塾で学んでいたので、具体的な実験から手がかりをつかむという意識を持っていたおかげで、だいぶ助かってしましたが、それでも、正直体系化されていない分野な気がして、どこから飛び道具的な入試問題が出てくるのかということに戦々恐々としていました。
まあ、難しい問題が出れば捨てればいいだけなんですけれど、ほんの少しの知識を知ってるか知ってないかで差がつくみたいな問題だったら嫌だなぁと思っていたわけです。
そんなですから、ほんとうに一部の入試数学に精通した講師だけが、その分野を扱えるという状況で、〇〇先生に習わねばとか、〇〇塾に行かねばとか、「大学への〇〇のマ〇〇ーオブ整数」をやらねばとかいう状況であったわけです。学校の先生などはとても扱えませんでしたから。
しかし、今や学校の指導要領の範囲に入りまして、習熟度やレベルの差はあれ、皆がなんとなく、不等式で絞り込んだり、なんとか余りの議論をしたり、なんとなく不定方程式を解いたりしています。
これは恐ろしい進歩だと思うわけですね。
例えば東大の2006年の文系の第3問とか理系の第4問なんかは、今の課程の生徒にとってはかなり確実に部分点を拾える問題となったわけです。
割と典型的な不定方程式の問題ですから。
もちろん皆が解けるようになるので、少し難しくしてやろうという大学側の意図が働く可能性はゼロではないですが、整数問題はあるレベルを超えて難しくするととんでもなく難しくなってしまう(少なくとも入試のあせっている現場で発想などが思い浮かばなくなる)ので、あまりレベルとしては変わらないような気もしますね。
時代の流れがありますね。
僕ですら自分の現役時代、編集者時代と課程の変化に踊らされてきましたが、20年以上続いている稲荷塾ですから、稲荷先生は、相当いろんな高校数学の課程の変化を見てきていらっしゃるでしょうねぇ。