将棋賛歌

「一局ですね」

将棋である局面における良し悪しを判断しようとするとき、その後の変化が多過ぎてどちらに転ぶかが判断できないとき、実際にやってみないと分からないという意味で「一局ですね」と言って、検討を打ち切ることがあります。

羽生が出て来て勝ちまくっている頃、文吾ちゃん(将棋の福崎文吾九段)に羽生のことを「どう思う?」と聞いたことがあります。

「普通の感覚では一局ですね、というところを羽生さんの場合はまだまだ先を掘り下げようとする」

文吾ちゃんも「王座」と「十段」のタイトルを取ったことがあるので、いわゆるトップ棋士ですし、特に当時は脂の乗り切ったというか、相当に勝っていたときでしたが、そのレベルから見て羽生は普通じゃないと映っていたのです。

まあ、文吾ちゃんも私から見たら普通じゃないです。この形は攻められるはずがないと、しっかりうガードを固めていても、ガードごとぶっ飛ばされるというか、こちらの常識が全く通用しないと感じていました。

プロの世界とは、そういう特別に才能に恵まれた人たちが、しかも切磋琢磨し、努力し続ける世界です。そこで生きていくということはあまりに厳しいことなので、プロになれなくてよかった、などと言うこともありますが、それでもやっぱり私にとっては憧れの世界なのです。

ところが、このところ三浦君が不正をしたんじゃないかと新聞等で騒がれています。そんなはずはないと私は信じます。その指し手がどんなに超人的であったとしても、それは彼から出てきたものであると思うのです。

ともあれ、将棋界が注目されることはありがたいことです。

「聖の青春」も映画になりましたし!

これは是非観てください。

11月19日から京都でも観れるようです。

村山君のことは、ちょっとあれこれ思うだけで胸が締め付けられて涙がこみ上げて来ます。こんなに純粋に生きた人がいたということが奇跡ですし、将棋を知らない人でも感じるところがあると思います。