アレルギー検査と仮説検定

松谷です。

娘のアレルギー検査みたいな表を見たときに、実際に仮説検定っぽい話が用いられているなと感じました。

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それは、検査表に「疑陽性」という文言があったからですね。

 

「疑陽性」というのは陽性の疑いがあるということですね。実際は、陰性とも陽性とも言い切れないみたいな状態のことですね。似たような言葉で「偽陽性」というのがありますが、これは本来陰性であるのに、間違って陽性と判断してしまうことですね。こういった誤りの仕方のことを第1種の過誤とかあわてんぼうの過誤とかいったりします。まさに仮説検定の用語です。

 

一般に、仮説検定では、ある仮説を立てて(帰無仮説といいます)、それを無に帰することで(そんなことはありえないぜ!ということで)、逆の仮説(対立仮説)を示すというような流れをとります。背理法のような流れですね。

たとえば、稲荷塾の生徒のうち適当に選んだ10人の京大数学入試の平均点は110点だったが、一般の受験生の京大入試の数学の平均点は100点であった。

このとき、もし、「稲荷塾の塾生の数学の実力が一般の受験生より明らかに高い」ということ(対立仮説)を示したいというならば、まず、その逆である「数学の実力は他の一般の受験生と変わらない。(つまり、たまたま少し点数が高かったにすぎない、誤差の範囲に過ぎない)」を帰無仮説としてたてます。

そして、その仮説のもとで考えると、京大入試の数学の点数の分布(平均点や分散だったり正規分布なのかどうかなど)を考慮して、10人を抽出したときの平均として110点になるというのが確率的に恐ろしくレアなことである!(たいてい5%か1%をその確率的な判断のラインとして設定します。これを有意水準とか危険率とかいいます)ということが言えれば、仮説は棄却され(おかしい!ということになり)逆の対立仮説の「稲荷塾の塾生の数学の実力が一般の受験生より明らかに高い」が示されるということになるわけですね。

 

で、今回のアレルギー検査のケースだと、簡易な血液検査により、特異的IgE抗体の血中濃度を測ることによってアレルギーに陽性か陰性かを判断しているみたいなのですが、

もし、アレルギーの可能性がないと仮定した場合(陰性ってことですね)、そのときに想定しうる範囲の血中濃度があるわけですね。そこをはみ出すようなレアな濃い濃度であった場合、陰性ではない、すなわち陽性であると判断するわけですね。ただ、やはり確率的なものですし、できるだけ間違いを起こしたくはないわけです。

そうすると、陰性であることを見逃して陽性とするよりは(つまりアレルギーはがないのにアレルギーあると思ってしまう)、陽性であることを見逃して陰性としてしまう方が(アレルギーがあるのにアレルギーがないと思ってしまう)困りますよね。

ということは最初の陽性判定はかなりわずかでも陽性の可能性があれば陽性の疑いあり、すなわち疑陽性としておく方がいいわけです。特に、もし検査の負荷が軽く何度でも検査できるようなものであれば、疑陽性となっているものの中から再検査、違う手法での検査、精密検査などして、「あのですね、疑いがあったのですが、、、実はやっぱり大丈夫でした!!」とする方がいいわけですね。患者も嬉しいことが起こったかのように錯覚しますし。

というのがだいたいの理論的なところだと思うのですが(専門ではないので違ったらすみません)、

まあこんなのは昔からあるわけで、もっと検査自体は簡易化されていて、特異的IgEの血中の濃度を測ればもうその値だけで、6クラスに自動的にうまく分けれるようになっているみたいです。

娘のそれを見るとスギに対するスコアが4になっていて、スギ花粉の花粉症の発症率が50%ということだったので、僕の遺伝だったら申し訳ないなと。。。

特異的lgE抗体価による判定(CAP RAST※法)
IgE抗体価(UA/mL) スコア 判定
<0.35 0 陰性
0.35~<0.7 1 疑陽性
0.7~<3.5
3.5~<17.5
17.5~<50
50~<100
100以上
2
3
4
5
6
陽性