じっくり行こう!

昔、「最大の塾ではなく最高の塾へ」とかいったキャッチで急激に伸びて行った塾がありました。

「ふむふむ、ここは何か一味違ったポリシーをもっているな …」と共感したものでした。

ところが、その塾は今やこの辺りでは最大の塾となり、いつしか上記のキャッチを取り下げてしまいました。(ひょっとしたら残しているのかも知れませんが、少なくともチラシ上からは消えました)

それはいいことなのか、悪いことなのか、私には分かりません。

一見否定的な書き出しにしてしまいましたが、ノウハウ自体は維持されているようです …

つまり、その塾出身の生徒を観察するに、勉強法が確立されていて、非常に教えやすいです。

 

塾が発展していくとき、何より人材の確保が問題になります。そこにノウハウの多くが付随しているからです。

ですから、急激に教室数を増やしたりすると、教育の質が劣化してしまうのです。

私が予備校講師になるまでに務めていた関西進学セミナーという塾はまさしくその失敗をしました。

私が入ったとき150人だった生徒が次の年には300人になり、さらに次の年には450人、そして700人、という具合に日の出の勢いで生徒が増え、茨木の本部に加え、高槻教室、茨木東教室を出しました。

要するに人材を分散したのです。

その後のことはあまり詳しくは分かりません。というのは高槻教室出店とともに私はそこに移り、その1年後に教室長とけんかをして退職し、予備校講師になったからです。

でも、在職中に教えていた生徒たちが京大に入り、その塾のチューターをすることになった関係で断片的な様子は伝わってきました。

予想された通り、徐々にではありましたが、崩壊が始まり、遂には塾自体が消えてしまいました。

当時、競合塾として京大セミナーという塾があり、関西進学セミナー高校部の生徒数が700人になった段階で、京大セミナーの生徒数が1000人ほどで、追い付け追い越せというのが我々のスローガンで、思い起こせば勢いもあったし、楽しかったです。しかしそれでも潰れてしまいました。さらに言えば、その京大セミナーも数年前になくなりました。

どんなに勢いがあっても、一つ歯車がかみ合わなくなれば、一気の下り坂が待っているのです。

 

空中分解しないための方策は、人材によるノウハウ以外のノウハウの基盤を作るということがまず大切です。最初に書いた「最大の塾」を目指しているところは、これがある程度できていると想像されます。人に頼りすぎている状態で規模を拡大してはいけないということです。

次に重要なのはゆっくり成長することです。ゆっくり成長することで、人に依存したノウハウが継承されていくのです。

そして何より、人を育てるということです。

 

さて、何でこんなことを書いているのでしょうか?

 

まあ、もちろんそれは、稲荷塾も発展の道を模索しているということです。

「私」という人間に属していたノウハウをできるだけ一般化し、誰が担当しても同じ結果が得られるようにしようとしています。

次に成長スピードですが、十分過ぎるほどゆっくり成長しています。もっと一気に行かんものかとじれったくなるほどです。しかしこれがいいのでしょうねぇ …

それから何より松谷君が成長することですねぇ … 。幸い、彼は優秀ですし、研究熱心ですから、急激に成長しています。でも、やっぱり時間がかかります。特に年令が保護者の年令を越えるということが重要です。そうして初めて保護者にも頼られるという状況が生まれてきます。

 

ということで結局、地道にじっくりやるということになるわけです。

頑張ります。