勉強の仕方

稲荷塾で新しい企画をする場合、うまくいくかどうかを少人数で予め試してみることが多いです。

たとえば、中2から高校数学に入るクラスを作る場合も、「特別クラス」という名前を付けて2年間実験してみました。

当時、中2から高校数学に入るのは私の知る限り灘だけで、彼らは非常に優秀だからそうしているという印象があったのです。

そういう意味で、こわごわやってみたという感じだったのです。

しかも、そのとき集まった生徒は中高一貫校(洛星と洛南)の新中2で、まだ中学数学も学校では終わっていない状況でした。

ですから、その終わっていない部分を補習しながら、新中3の子たちのクラスに放り込んだのです。

しかし結果は、呆気に取られるほど楽勝でした。そして彼らはその後、府立医大、東工、府立医大に進みました。

結局、灘は生徒が優秀だからそうしているという以上に、その方法が効率的だからそうしているという確信に至りました。

 

今、新中1生に3ヶ月で中学英語を入れてしまうという「A会話準備クラス」を計画していますが、これも1人の6年生の子を対象に実験中です。

これは、「ある程度の能力とやる気があればできる」との見通しで始めましたが、実際上は結構ハードです。

ただ、楽しそうに取り組んでくれているのが救いです。

もちろん、3ヵ月程度で英検3級レベルに飛躍し、A会話にスムーズに入れるとすればメリットも大きいですが、その過程が「しんどいだけ」だった場合は考え物です。

 

それから、反転授業についても「実験」をしました。

ちょうど2年半ほど前のことです。

当時は1年かけて数ⅠA、数ⅡB、数Ⅲのそれぞれを学ぶ形にしていたのですが、夏が過ぎてからの途中入塾の子に対して、どのように補習しても、入ってもらう適当なクラスを選ぶことが出来ませんでした。

それで、土曜日に来てもらって、半年間で春から始めている子たちの進度に追い付こうと計画しました。

ただ、その1人のために、また一から授業するのもめんどうだと感じていたとき、ひらめきました。

私が話そうとすることは既に「稲荷の独習数学」にまとめられていたのです。

ですからまず、次に学ぶ範囲をそれで読んで来てもらうことにしたのです。

そして塾では分かりにくかったところを説明し、その後、演習をして問題が解けるようにするというスタイルにしたのです。

驚いたことに進度は2倍になり、成績も対応するクラスの中で上位をキープすることになったのです。

それで気付いたのですが、通常授業は無駄が多いのです。

一番の無駄は「板書と、それを生徒がノートに写す時間」です。下手をすると、この単純作業に授業時間の半分程度が使われていました。

もし、板書内容とその説明がまとめられたものがあり、生徒はそれを読んでから授業に参加するようにしたらどうなるでしょうか?

これがこの1人の生徒の補習で起こったことであり、その結果2倍の進度を実現したのです。

実際の授業では、「稲荷の独習数学」を読んで来るだけでは、理解度の差が大き過ぎて問題が発生したので、「稲荷の独習数学」に対応するように作られたテキストの問題を解いてくるようにし、予習のレベルを上げることにしました。

本を読んだだけで分かったつもりになっても、その理解は浅く、問題が解けるところまで来ていません。そこでテキストの問題を解いて、詰まれば本の解説に戻り、… という作業を繰り返して理解は深まって行くのです。

そうして授業では、それらを整理し直し、小テストで確認し、小テストの直しをし、最後に演習プリントで演習を積みます。

 

あるとき、「これが今話題になっている反転授業じゃないか?!」と気付きました。

反転授業は、簡単にはクラスに集まることができないようなアメリカの僻地に住んでいる子どもたちのために開発されたもので、基本的にウェブ授業を用いて実行されます。

日本でもこれを取り入れようとして研究会をしている先生たちがたくさんいます。

私の耳にもそういう話は入って来ていましたが、ウェブ授業を作ること自体が面倒だし、それほどの効果があるとは思われなかったので、単に話を聞く程度に留めていたのです。

ところが気付いたら、自分でそれをしていたのです。

ただ、ウェブ授業ではなく「稲荷の独習数学」を使うところが違っていたのです。

 

それで塾生たちの取り組みを見るとき、この方法は本当に良かったと感じます。

何と言っても「勉強の仕方」を彼らに教えることができたからです。

「本を読んで理解したら演習に進み、詰まればまた本に戻って調べる」

こういう作業を通して身に付いたものは本物です。

それに、彼らが大学生になってからもずっと使うことができる方法です。

これを自然な形で彼らに伝えることができたことに大きな意義を感じています。

かつては、そのように取り組んでほしいといくら言っても、実行する者はごくわずかしかなく、無力感を感じることさえありました。

 

そういう意味で、ウェブ授業ではなく、本を使っての反転授業の方がもっと効果的です …。

今日はちょっと長めのブログになってしまいましたので、この辺で。

See you!