アクティブラーニング?

松谷です。

先日、新学習指導要領の改定案(小中学生用?)が発表になりました。

今後の教育の柱と目されている「アクティブラーニンング」が「主体的で対話的な深い学び」という言葉に変わっていました。多義的で意味が定まっていないような外来語ではなく、法令にも適するような日本語に変えようという理由みたいですが、別にぼやっと感は変わっていないですね。

 

まあ、とにかく、この方向で行くということは、確定のようですね。
さて、知らない方のためにお伝えすると、アクティブラーニングとは、複雑な現代社会に対応する人材を育てるために期待されている指導方法・学習方法です。

ひと昔前の、高度経済成長期などは、欧米の模倣という正解が存在したので、共通的な知識の詰め込みで、均一的な人材を育てることが大事と思われ、事実ある程度、その教育方法が機能しておりました。

しかし、この現代社会では、既存の正解などあまりなく、大なり小なり「新しい未知の問題」に対して、「既存の知識はベースとして」、あーでもないこーでもないと、「皆で協業しながら考え」、「最適そうな解決策を創り出す」ことが求められています。

それは、ぼくの10年間の社会人経験でもそうでしたし、どの会社でもそうではないでしょうか?

よって、そのような社会で適応できるような能力を身に着けるためには、一斉授業で画一的な知識を講義型で教えるだけではだめである!だから、「主体的で対話的な深い学び」が必要だ!!となったわけです。

 

もちろん、それでは今の現代社会で活躍する人はどこでのその能力を身に着けたのかという疑問が残ります。おそらく、それは、学校の授業の現場ではなく、バイトや部活、サークル、ゼミ、研究室といったところなのでしょう。そして、そんなあやふやなところに任せて個人の運不運で身についたり身につかなかったりということをできるだけなくし、学校現場で皆に対してやるぜ!というスタンスになるわけです。

 

さて、僕の前職の会社の同期にその関連の部署にいた人がいて、学習指導要領を作っているひとたちとも協力しながら、新しいアクティブラーニング型の授業を模索したり、実演したりして、各学校に導入を促したりしていました。
どんな授業かというと、まずは、教室で複数のグループを作り、皆に課題を与えて、その中で議論させ、そして、協力して作業させ、時に教えあいながら、最終的に発表をし、それをさらに深い学びにつなげていくといった具合です。もちろん課題は、「y=2x+3のx切片を求めよ。」みたいな問題ではなく、「y=2x+3を原点対称移動させた直線を方眼紙にかけ。また、一般に原点対称移動した後の式と、元の式との間にはどのような関係があるか推測せよ。理由も考えよ。」というような、やや議論の余地があるように見える課題となるわけです。

 

実際アクティブラーニング型の授業の効果はどうだと思いますか?

 

実際、理解や定着にすごく効果があるようです。
ただ、僕は、これは当たり前だとは思います。一斉に知識を講義で教えるだけでなく、皆で話し合ったり、時に教えあったりして時間をかけて、知識を深い学びにもっていけばそら理解や定着が進みます。
実際、研究結果として、人が物事を理解定着する際には、人に教えるという経験をしたときが、最も理解定着するということがあるくらいです。
ただ、僕は、これでアクティブラーニング大賛成!やった!最高の指導法だ!日本がよくなる!
といった風に考えているわけではありません。

 

アクティブラーニングには、見過ごせない大きな大きなデメリット・問題点があると思っています。そして、それは克服できないのではないかと、思われるくらいのものです。

 

それは、アクティブラーニング型授業は時間がかかりすぎるということです。たとえば、直線の軸対称移動・原点対称移動を教えようと思ったら10分くらいで教えられますし、そのあとの演習を通してできるようになるまでの時間を考えても30分くらいだと思います。しかし、アクティブラーニングだと1時間はかかるでしょう。つまり、ざっと2倍は進度の効率が悪いわけです。高校数学の現状のカリキュラムを消化するのだって、結構厳しい学校事情のなかでこれはかなり難しい問題です。
ということは、これを実現するには、授業時間を増加するか、学ぶ項目を削減するかの2択しかないわけです。

しかし、

授業時間の増加については、既にぎちぎちの授業時間のどこを増やすというのでしょうか。厳しいでしょう。

 

学ぶ項目の削減については、悪名高き「ゆとり教育の再来だ!」と批判を浴びるのは目に見えており、無理でしょう。

 

ということで、僕には、正直どうやって実現するのかまったくわからないのです。。。
ただ、もし実現する方法があるとすると、2つくらいしか思いつきません。
一つは、ほんの一部の授業だけをアクティブラーニング型にして、イベント型のものにする。例えば、数学は効果がありそうな「図形と方程式の軌跡」だけをアクティブラーニングでやる!みたいな感じですね。これなら、多少の授業時間増だけで大丈夫でしょう。ただ、これは意味があるのはわかりません。。。
もう一つは、アクティブラーニングが成功しているアメリカの大学を模倣することです。それは、大量の予習をしたうえで授業に臨むということです。アメリカでは、100Pくらいの文献を読んで、レポートにまとめてきてみたいな予習や課題がしょっちゅう出るようです。しかし、これを、全高校生に向けてやることができるのかに対しては、かなり疑問です。。。

 

う~む。ということで、とりあえず、公教育の流れを見てみないといけないなと思います。
ただ、稲荷塾の優秀な塾生ならば、もう少し実現の可能性はあるのかもしれません。反転授業も既に導入しているわけですから。
今日はマジメな話題でした。